メイウェザーVS那須川天心はなぜ実現できたのか? 裏事情を元K-1石井館長がガチンコ予想
12月31日、「RIZIN.14」でフロイド・メイウェザーが那須川天心と対戦する。ルールは3分3ラウンド制のボクシング・エキシビジョンである。現在、41歳のメイウェザーは50戦50勝無敗という成績を誇る正真正銘のトップ・ファイター。無敗のまま、5階級制覇を成し遂げている。ここまで来るには紆余曲折があった。両者出席の記者会見でカードが発表された3日後、メイウェザーは「会見は完全に不意打ち。自分は対戦に同意していない」と自身のインスタグラムでキャンセルを示唆。RIZIN側の必死の説得により、なんとか再び実現に向けて走り出すというドタバタぶりだった。
おそらく水面下では想像を絶する交渉劇が展開されていたはずである。そこで日刊SPA!は元K-1プロデューサーの石井和義氏をキャッチ。これまでK-1リングに他競技の選手を数多く上げ、マイク・タイソンにまでオファーした石井氏だけに、説得力抜群の“舞台裏”ガチンコ予想をしてくれた。メイウェザー側の意図は? RIZINがメイウェザーにこだわる理由は? 実際の試合展開はどうなる? このインタビューを読めば、多くの謎が氷解するはずだ。
──メイウェザーVS天心戦が実現すると知ったとき、館長は率直にどう感じました?
石井:すごいことを決めたなと脱帽しました。これはアントニオ猪木VSモハメド・アリ戦以来の快挙だと思いますね。しかもアメリカで試合をやるのではなく、メイウェザーを日本に呼んで闘わせるというのもポイントです。K-1もマイク・タイソンを日本に呼ぼうとしましたけど、無理だったんですよ。タイソンには過去の犯罪歴がありましたから。メイウェザーはトラブルメーカーではあるものの、日本に入れなくなるような犯罪歴は幸い存在しない。実はメイウェザーって総合格闘技が大好きで、PRIDEなどを観るために何度も来日しているんです。
──自身は総合のルールなんてとんでもないけど、観戦するのは大好きでしたか。
石井:そう。だからコナー・マクレガーとも闘ったじゃないですか。普通、メイウェザーほど名声を手にしたボクサーだったら、現役のUFCチャンピオンと試合しようという発想にそもそもならないですからね。リスクも大きいですし。そこで重要になるのがルールですよ。どんなことがあっても、絶対に自分の土俵で闘う必要がある。これは今回の一戦に限らず、異種格闘技戦をやるときの基本中の基本です。僕から言わせると、たとえばK-1ファイターが総合のルールで闘う時点でダメなんですよ。相手をK-1のリングに上げなくてはいけない。どこまでいっても総合は総合だし、ボクシングはボクシングですから。
──では、タイソンのときもK-1ルールを呑むように交渉していたんですか?
石井:もちろんです。タイソン相手ともなると非常にタフな交渉になりますから、途中でテーブルを徐々に低くしていって、最後はボクシングのルールでもしょうがないというケースはあります。でも、あくまでも最初はK-1ルールでオファーするのが鉄則。最初からボクシングのルールで交渉したら、ボクシング側にいいようにされちゃうのが目に見えていますから。「本当はK-1ルールでやってほしいんだけど、あなたたちがそこまで言うなら今回は私たちが譲歩します」という姿勢が大事であってね。「これはK-1のリング。K-1のルールで闘うのは当然。だからこそ、こんなにお金を払うわけです」という立ち位置から入っていかないと、交渉権を全部向こうに握られてしまいますから。
──タイソンのK-1デビューが流れたのは、結局、ファイトマネーが折り合わなかったからですか?
石井:それもあったし、さっきも言った日本に入国できない件もありましたね。メイウェザーVS天心に関して言うと、RIZIN側の本音としてはアメリカでやりたいという気持ちもあったかもしれない。アメリカ開催だったら、向こうのPPVだってゴールデンタイムに流せますし。いいですか? アメリカというのはニューヨークとロスでも4時間の時差があって、その調整にテレビ局が四苦八苦しているような国なんですよ。日本で夜なんかに試合されたら、アメリカでは観る人がガクッと少なくなる。スポーツ中継っていうのはライブが生命線ですからね。
──先ほど館長は「日本で試合することがポイント」とおしゃっていましたが……。
石井:まさにそこなんです。収支面を考えたら、絶対にアメリカでやったほうがいい。日本開催ということは、自分たちでリスクを抱え込むことになるわけですし。今回のメイウェザーの正確なファイトマネーは知らないですけど、おそらく10億~20億円といったところでしょう。その算段をどうするのか……そういうところまで、僕たちみたいな業界の人間は考えちゃうんですよね。だからこそ、今回のバラちゃん(榊原信行RIZIN実行委員長)は「ようやりよったな」という話になるわけです。メイウェザーVS天心は話が一度ポシャったじゃないですか。そのとき、僕はバラちゃんに「逆にいいプロモーションになりましたね」ってメールしたんです。「どういうことだ!?」って世界中で大騒ぎになって、注目が集まったわけですから。「だからここでリングにメイウェザーを上げたら、あなたの勝ちです。頑張ってほしい」って僕は励ましたんです。結果的には、その通りになりましたけど。彼の強みは、しぶとさですよね。それが今回は功を奏したと思う。たぶん血の小便を流すような苦労をしたんじゃないかな。
メイウェザー参戦の裏事情とは?
出版社勤務を経て、フリーのライター/編集者に。エンタメ誌、週刊誌、女性誌、各種Web媒体などで執筆をおこなう。芸能を中心に、貧困や社会問題などの取材も得意としている。著書に『韓流エンタメ日本侵攻戦略』(扶桑社新書)、『アイドルに捧げた青春 アップアップガールズ(仮)の真実』(竹書房)。
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