更新日:2023年03月20日 10:50
仕事

年収1000万円から失業者に…定年前に会社を飛び出した男たちの明暗

 少子高齢化が進む昨今、長く働き続けることはもはや必然に。かつての「働き方」がいよいよ微塵も通用しなくなるこれからの時代、60歳以降の人生を確実に乗り切るうえで必要となるものとは一体? 経歴よりも資格よりもずっと重要となる「サラリーマン生活の適切な終え方」ここに考察する——。 会社員人生の終活

定年を前に会社を飛び出した男の明暗

「退職当時の年収は1000万円を優に超えていましたが、今は本業の収入はゼロで、失業手当が毎月20万円入るだけです。この給付期間も間もなく終わりますが……」  そう話すのは、30年以上勤めた大手マスコミを’18年に退職した安川久さん(仮名・56歳)。アスリートの力を社会貢献に生かすクラウドファンディング事業を立ち上げるべく、50代半ばを前にシニア起業の準備をスタート。新たな夢に燃える安川さんだが、現実はそう甘くなかった。 「専業主婦の妻からは、『私の人生の予定はこんなはずじゃなかった。失業者の妻になるなんて』と罵られました。以前から妻は『お宅の旦那さんはいいところにお勤めで羨ましい』と周囲から言われて鼻が高かったらしく……。最後は退職に渋々ながら承諾してくれましたが、今も『リストラされたと思われるのは嫌』と言って私のことを周囲にひた隠しにしています。不愉快ですが、妻の人生を狂わせたのは確かに私ですからね。不平は言わないようにしています」  安川さんには、これまでにためてきた預金や割増退職金がある。そのため当面の生活に困窮することはないが、それでも経済的な不安は拭えないと話す。 「言わずもがなですが、自然と生活も質素になりました。光熱費はもちろん、石鹸などの生活雑貨もけちけちと使っています。ちょっといい店で飲むなんてことは、まったくなくなりましたね。借金を返せずに切腹・斬首される夢を見て、跳び起きたこともあるくらいです」  安川さんがかつての同僚との飲み会を避けるのは金銭面の理由によるものだけではない。 「私の苦労話が彼らの酒の肴にされるのも嫌ですし、『あいつは早まったな』と思われるのも癪ですからね。それで彼らと音信を断っていたら、もう自然と誘われなくなりました」  退職から間もなく1年。しかし、起業の具体的な目処が立つのはまだ先という安川さん。最近では、うまくいかなかった場合にも備え、生活の糧を稼ぐ“ライスワーク”も探しているという。 「考えごとばかりしているせいか、寝つきは悪くなりました」
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海外転職で「定年」とは無縁の人生を獲得
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