もし、夏目漱石がおっさんLINEを送ったら…
若者、特に女性たちから「長い」「ウザい」「気持ち悪い」と悪評が絶えないのが、おっさんが送りがちなLINEの文章。通称「おっさんLINE」だ。
文字数制限がないのを良いことに、チャットツールであるLINEの趣旨を無視し、どこまでも長い上に独りよがりで、若い女性に気に入られようと媚びつつもプライドを捨てきれず上から目線で、結局はドロドロした性欲を隠しきれない、世にも醜悪な文面である。
そんなおっさんLINEを、歴史に名だたる文豪たちが送ったらどうなるのか。ちょっとはマシになるのか、ならないのか……? そこで、今回は文学に精通した作家・高橋フミアキ氏に、夏目漱石の文体を模写したLINEを提案してもらった。おっさんLINEを送る手が止まらない諸兄に、いくばくか参考(?)になれば幸いである。
夏目漱石:「月が綺麗ですね」とは英国の言葉で「I love you.」となり、
そして、君はそれを承服したということになる。
――こんにちは! すみません、覚えてなくて、どなたでしたでしょうか?
夏目漱石:名前は言えない。
――?
夏目漱石:どこで君を見つけたのか、今となってはどうでもいいことのように思えるのだが、ただ渋谷のカフェで、「月が綺麗ですね」と吾輩が言い、君が「ええそうですね」と答えたことだけはしっかりと記憶している。
あの時、君は吾輩の有様を見て失笑を禁じえず、それを抑えるために美しく白い指を唇に当てたではないか、よもや忘れたとは言わせぬ。
夏目漱石:よって、君は吾輩とデエトしなければならないのだ。
今週の日曜日だ。いかがだろうか。
――日曜日はちょっと予定があるのでごめんなさい!
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夏目漱石が英語教師をしていたとき、「 I love you 」を「我、君を愛す」と訳した生徒に「日本人はそんなことを言わない。月が綺麗ですねとでもしておきなさい」と言った話は有名ですね。もし模倣したいなら、重箱の隅をほじくる視点を持つと、漱石風になります。明治の文豪ですから、古臭く、武士の気概や気骨を感じさせることがコツ。デートに誘うのにも、「恥」を感じているかのようにすると良いでしょう(高橋氏)。
【夏目漱石】
1867年、東京都に生まれる。イギリス留学後、大学講師を経て処女作『吾輩は猫である』を発表。代表作に『草枕』『三四郎』など。執筆中の『明暗』が未完のまま胃潰瘍により49歳で死去。脳が東京大学医学部に現在も保存されている
【高橋フミアキ氏】
作家。企業研修や小説スクールで文章術を指導。「芥川龍之介に学ぶ文章の基本」(第三文明社)など著書が累計50万部突破
<取材・文/週刊SPA!編集部>
※週刊SPA!7月30日発売号[もし文豪がおっさんLINEを送ったら]より
<もし夏目漱石がLINEを送ったら…作家・高橋フミアキ氏が再現>
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