「YouTuberになりたい」と退職代行を依頼する若者。お盆明けに殺到…
退職の意思を労働者本人に代わって会社に伝え、残務整理を円滑に進めてくれる退職代行サービス。これまで当連載でもさまざまなケースを取り上げてきたが、お盆休みまっただ中のこの時期、駆け込み需要で湧いているという。
【過去記事】⇒夏休み前に急増。退職代行をリピートする若者たちの本音
「8月初旬から問い合わせ件数は急増しています。昼夜を問わず、それこそ真夜中にも相談が寄せてくる人もいますね。お盆が終わる時期には、さらに増えるでしょう」
そう語るのは、労働問題に精通し、これまで1000件以上の退職代行案件を手がけたフォーゲル綜合法律事務所の嵩原安三郎弁護士だ。
「連休の最終日というのは、相談がグッと増える傾向が強い。その意味でいうと、お盆休みが終わる8月18日の日曜日に急増しそうです。この日は小学生の『8月31日』みたいなもの。夕方、『ちびまる子ちゃん』がテレビから流れてくる時間になると現実に引き戻され、翌日からの業務が頭をよぎる。ギリギリの労働環境で耐えていた人が堪えられなくなって、電話をかけてきはるんです」
今回は、夏休みに起こった「とあること」がきっかけで退職代行サービスへ相談したひとりの若者のエピソードを紹介しよう。
「つい数日前に退職代行業者にLINEしたんですよ。夜中3時にLINEしたら15分後にはすぐに話がまとまって。19日の朝イチには会社に連絡してもらえる運びになりました。これでもLINEするまで結構、悩んだのに……拍子抜けするぐらいあっけなかった(笑)」
そう語るのは、目黒区にあるデザイン会社に勤務する津田翔馬さん(25歳、仮名)だ。
給料は手取りで35万円。同年代からすれば恵まれた待遇に見えなくもない津田さんが勤めるデザイン事務所は、社長含めてスタッフは総勢10人ほど。だが、「デザイン会社」という華やかな響きとは裏腹に、日々の業務は過酷だ。
「超零細企業だから常に人員が足りないんです。休日出勤は当たり前で、残業は月80時間を超えることも。特に納期前は2~3日、家に帰れないなんてザラ」
そんな彼も上司に掛け合い、有休を取得。3年ぶりに地元の富山に帰省した。
「久々に地元に残ったヤツらに会ったんですけど、みんなすごい幸せそうなんですよね。公務員になったり、地元の企業に就職したり……職種は地味だし、手取りも20万円台前半とか超冴えない。最近は子どもが生まれたヤツもいる。もちろん生活は厳しそうだけど、休みはちゃんと取れているし、オンオフのメリハリもついている。いざとなったら親にも頼れるし、なんか『すげー余裕』って感じで」
東京でデザイナーとして足跡を残そう。そんな意気込みで地元を去った津田さんだったが、今、彼の目に眩しく映るのは、かつての親友たちのほうだ。
「あいつら見てると『俺、なんのために働いてるんだろう』って思っちゃった。デザイナーといっても、いつも期日ギリギリの納品日に合わせて上司から言われた指示をこなしているだけ。嫌味なんて挨拶がわり。こんな仕事、クリエイターなんてほど遠いですよ。20代の残りの時間は組織にとらわれず、ブログで好きなことを発信して、生きていこうと思ったんです。YouTubeで隙間を見つけるのもいいですね」
「お盆明けの朝イチで段取り完了」
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