退職代行が水商売や風俗店でも大流行のワケ
「もしも退職したいなんて伝えたら、訴えられる」「何度も辞めたいと伝えているのに、辞めさせてもらえない」――こんな理不尽なブラック企業を逃げ出すための策として、退職代行サービスが脚光を浴びている。
実は、退職代行サービスがカバーする範囲は我々が考えるよりもかなり広い。キャバクラ、ガールズバーやホストクラブなどのナイトワーク。さらにデリヘルやソープランドなど風俗業界で働く人々の間でも、徐々に認知度を上げているという。
労働問題に詳しい嵩原安三郎弁護士は次のように語る。
「水商売や風俗で働いている人からの相談も確実に増えています。黒服や店長などの正社員ではもちろん、雇用契約書を取り交わしていないアルバイトのキャストでも、退職代行サービスは利用できます」
しかし風俗や水商売の場合、他業種とは違う独特の難しさがあるとも。いったい何か?
「単に退職の意思を伝えるだけでは済まないのが、水商売や風俗業の難しさ。というのもこの手の業界では、いまだに『給与が手渡し』の店が数多く存在するんです。『最後の給料は辞めてから1か月後。直接、店に取りに来い』と言われることもザラ。店側は最後にイヤミのひとつでも言いたいのでしょうが、実際に辞めてから給与を取りに行きづらいため、結果的に給与未払いになってしまうパターンも多い」
また給与の手渡し同様、水商売や風俗業界の特有な問題として挙げられるのがバンス(前借り)だ。銀行や貸金業者の審査が通りづらい職業柄、店側に給与の前借り(=アドバンス)として借金をする隠語である。
「キャストが入店する際に『100万円を前借りして、月々10万円を給料から天引きして分割で返済する』などの条件を店側と交わしても、いざ辞める段になると店側から『一括で払え』と言われ、追い詰められて相談に来るケースもあります」
何より経営者にとっての最大の痛手は、貸し付けたキャスト当人と連絡が取れなくなり、前貸ししたお金を回収ができなくなること。つまり「飛ばれる」ことだ。
「はじめこそ聞く耳を持たない経営者もいますが、弁護士が入って『飛ぶリスク』を説明し、交渉する。そうすることで、次第に態度を軟化させる経営者もいます」
このように風俗や水商売の場合、単に「辞めたい」という意思を伝えるだけではなく、退店する際になにかと交渉ごとが多い。中には店長ですら、実質的な経営者を知らない、もしくはあえて明かさないこともあるので、おのずと交渉の難易度は上がる。
「この対応は、弁護士以外には不可能ですね。退職代行業者に相談したものの、このような話になると『労基(労働基準監督署)に行って』と言われて終わり。たらい回しにされた挙句、最終的に弁護士へ相談に来るケースも多々あります」
風俗や水商売で働いているキャストの中には、店の寮に住んでいたり、送迎で自宅の場所を店側に把握されたりしていることも多い。そのために当人が辞めたいと告げると店のスタッフが自宅に押しかけてきたり、脅されたりするトラブルもあるという。
ここで千葉県F市のデリヘルに勤めている前田梨花さん(20代、仮名)の例を挙げよう。
昼は医療機器メーカーで派遣社員として働いている梨花さんは、生活費の足しにと1年ほど前からデリヘルのバイトを始めた。ロリ顔でFカップの梨花さんは、常連客からの指名も多い人気嬢だ。
「実は最近、彼氏ができたので風俗は辞めたいと思うようになったんです。ゴールデンウィークが明けてからすでに2度ほど辞めたいと店長に伝えたんですけど、その度に『もうちょっと頑張らないか』って言われて……」
「風俗や水商売ならでは」の難しさとは?
「辞めたら職場にバラすぞ!」脅された人気風俗嬢の末路
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