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香港の民主主義が死んだ日。警察の実弾発砲を正当化する工作も…

緊急法発動で覆面禁止法を即日施行

「香港はもう終わった」  10月4日、ツイッター上にはこんなコメントが溢れた。その日、香港政府が緊急状況規則条例(緊急法)を発動。立法手続きを踏まずに、デモ参加者が顔を隠すのを禁じる「覆面禁止法」を成立させたためだ。  この緊急法ができたのは、英国植民地時代の100年近く前。最後に発動したのは中国・文化大革命の余波で左翼勢力の暴動が起きた1967年のことだったという。それから約50年の月日を経て、香港はかつてないほどの混乱期に突入した。  ご存じのとおり、発端は中国への身柄引き渡しを可能にする逃亡犯条例の改正案だった。抗議者たちはこの①条例撤回に加えて、②警察の武力行使の責任を追及する独立調査委員会の設置、③デモを「暴動」とする認識の撤回、④抗議者の罪を問わないこと、⑤普通選挙の実施〈当初は林鄭月娥(キャリーラム)・香港行政長官の辞職〉という五大要求の実現を求めて、6月に200万人デモを実施。それから3か月して同条例は正式に撤回されたが、香港の怒りが収まることはなかった。香港問題を専門に研究する倉田徹・立教大学教授が話す。 「抗議者は暴力行為も辞さない勇武派と平和的デモを行う穏健派とに分けられますが、彼らは共通の目標を持つ仲間として、お互いを『兄弟』や『手足』と呼び合い、決して互いを非難するようなことはありませんでした。  しかし、このままデモが収束すれば、勇武派が大量に検挙されるのは免れない。’14年の雨傘運動後には多くの若者が暴動罪で断罪されました。特赦の要求がのまれなければ、今回も多くの“兄弟”が処罰されてしまう可能性が高い。だから、抗議者たちは“自衛”のためにも抗議活動を続けているのです」  継続するだけではなく、政府に対する圧力を強め、抗議活動はより過激になっていった。市民らと抗議の声を上げ続けている香港在住の日本人タレント・Rieさんが話す。 「抗議者は逮捕されても、暴力的な鎮圧を繰り返す香港警察は一切責任を問われていません。9月末にはインドネシア人記者が警察の放ったゴム弾で右目を失明するなど、抗議者以外にも被害が及んでいるのに謝罪もない。  だから、ここ1、2週間でネットの掲示板では『我々も戦って自らの身を守るほかない』という書き込みが増えて、警察の暴力に対して暴力で対抗する若者たちが増えました。そして、逃亡犯条例撤回で4つに減ったはずの要求は『警察の解』が加えられるなど、さらに大きな要求へと変化しているのです」  その最中に起きたのが香港警察による実弾発砲事件だ。中国建国70周年の記念日に、デモ活動に参加した18歳の男子高校生が拳銃で撃たれた。 「至近距離で胸を撃たれて、銃弾は心臓から3cm外れた肺を貫通していました。そんな生命の危機に瀕した少年を凶暴犯に仕立てて、警察は逮捕・起訴したのです。少年はビート板のような軽い素材の盾とプラスチックの棒で武装してデモに参加していたので、倒れた彼の手元にはその棒が転がっていました。しかし、救急搬送する直前に、周囲の警官が鉄パイプを少年の手荷物としてまとめる様子が動画として残っているのです……」(Rieさん)
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鎮圧行為はエスカレート
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