SNSで炎上「すいません禁止」の居酒屋で「すいません」と注文したら…?
渋谷区笹塚。新宿にも渋谷にもアクセスがよい、人気の住宅街の一角に、こぢんまりした居酒屋が一軒。店名を示す「さささのさ」という看板も一般家庭の表札ほどの大きさしかない、小さなお店だ。
ネット情報によると、2018年に開店した「さささのさ」は、魚や焼き物を中心とした創作和食の居酒屋で、オープンからおよそ1年のまだ新しい店だ。つい先日、ここに来店したと思われる人がTwitterに一枚の画像を投稿。それは、同店のお手洗いに貼られた張り紙で、その内容は以下の通りだ。
この画像投稿は瞬く間に2万以上のリツイートとなり、多くの人の目に触れるに至った。その反応はほとんど全て「めんどくせー!」「何か勘違いしてる。すぐに潰れるよ」といった否定的なもの。元の投稿では店名が明かされることはなかったが、当然ネットが得意の犯人探しがはじまり、一朝一夕で「さささのさ」という店だということまで拡散されはじめることになった。
もし「すいません」と呼んだら怒られるのか、非難される通りの面倒くさくて勘違いしている店なのか。そしてあれほどまでに炎上したため、閑古鳥が鳴いているのではないかを確認しに行くことに。10月後半のある夜、念のため予約をして来店すると、快活な「いらっしゃいませ」の声とともに迎えられた店内は、平日だというのにほぼ満席の状態。予約しておいてよかった。
焼き場が目の前になるカウンター席に陣取り、一杯目のドリンクを決める。もはやルーティンのようなもので、心が決まれば顔を上げ自動的に口から「すいません」が出そうになるが、そこで思い出した。ここは「すいません禁止」の店だ。
一瞬の不思議な緊張とともに飲み込んだ。しかし、「すいません」を言ったらどうなるか知りたい。わずかな勇気を出して「すいません」と声をかけて見た。すると意外にも「はいよ」と明るい返答。肩透かしを食らったような感覚で生ビールを注文する。
もしかしたら、私のような一見の客にはドリンクを提供するときに「すいません禁止なんで、名前で呼んでください」と釘をさされるのではないだろうか。とも思ったが、何事もなく生ビールがやって来た。薄針のグラスに注がれた美味しいビールを飲んでいると、お通しがやってくる。おもわず「あ、すいません」と受け取ったが、やはり何事も起こらない。
調子に乗った私は、つまみを頼むときも二杯目の注文時も「すいません」と店員を呼んだが、やはり普通に受け止められる。
よく考えれば、私はここが「すいません禁止の店」だと知ってやってきたが、店内にそんな掲示は一切ない。もちろん店外にもそうした文言は見られなかった。炎上をうけて「すいません解禁」をしたのだろうか。
件の投稿では、貼り紙はお手洗いに貼ってあるとのことで、見に行ってみることに。そこには確かに「すいません禁止」の貼り紙。確かにまだ、すいませんは解禁されていないようだ。
お手洗いから戻った私は、次のおつまみを注文する際に名前で呼んでみるとこにした。
店員さんは皆、首から千社札風の木札を下げていてそこに(下の)名前が書いてある。私の目の前で、魚をさばいている人の名前を呼んで、おつまみを頼んでみる。「りんさん」と声をかけると「は~い」との返答。すいませんで呼びかけた時の、数倍の明るさと笑顔が返ってきた。
ここが今、SNS上で大きな非難の的となっている。その真相をつかむべく、私は実際に飲みに行ってみた。
なぜ非難をうけているのか
来店する。そして「すいません」を言ってみる
一応、名前を呼んでみる
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Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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