新型肺炎、自衛隊も「要請があれば協力する」。国の対策は大丈夫か?
その77 自衛隊も駆り出される感染症の「封じ込め」対策
中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウィルス(2019-nCoV)については誰もが心配していると思います。インターネット上では病院に殺到する患者や道で倒れる人の動画、緊急封鎖中の誰もいない武漢の様子が流れています。今は、最悪の事態を想定しつつ、しかしパニックに陥らないよう、冷静に事実をチェックしてほしいと思います。
災害派遣でもそうですが、厚労省からの要請があれば自衛隊が出て対処します。自衛隊はNBC兵器に対処する必要から、防護服を持っています。また、自衛隊中央病院と防衛医大病院は感染症指定医療機関となっています。
今回WHOは、最初に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)には該当しない」と発表しています。これについて、インターネット上では「なんで? WHOの見通しは甘いのでは?」という声もありましたが、その後、WHOは新型肺炎の危険度は世界的にみて高リスクだったと事務的ミスを認めました。WHOの見通しの甘さは情けないことに「事務的ミス」が原因だったようです。
30日になり、WHOはようやく国際的な緊急事態を宣言。我が国の感染症対策はWHOを準拠しているため、官邸も新型コロナウィルスを指定感染症にすると発表していましたが、緊急事態宣言が出たことで2月7日から2月1日に指定感染症施行を前倒す方針を決めました。やっとです。
※尚、これは1月31日時点の情報を基にしており、今後大きく変わる可能性もあります。
これにより、2月1日から就業制限や検査、入院など所定の措置を取ることができるようになります。このミスでWHOの信頼度は大きく損なわれました。正しい判断ができなければ全世界でパンデミックが引き起こされ大変なことになります。
外務省も31日になって、不湖北省を除く中国全土に対する感染症危険情報を、不要不急の渡航自粛を求めるレベル2に引き上げました(武漢市を含む湖北省については渡航中止を勧告するレベル3を維持)。
しかしながら、中国からの渡航者の全員を強制的に検査することは現時点ではまだできません。検疫体制は強化しているもののサーモグラフの値を見ても解熱剤で一時的に体温を下げている場合もあり、水際で止めることはできません。日本国内で2例目となった感染者は症状が出た後、4日間も東京都内にいたことが報告されています。武漢に渡航したことのない二次感染患者も出てきました。どう対処するのか心配です。
河野太郎大臣「厚労省から要請があれば協力する」
河野太郎防衛相も「厚労省から要請があれば協力する」と1月24日のツイッターで語っています。実際に2009年の新型インフルエンザでは要請を受け、到着した飛行機に自衛隊の医官が防護服を着て乗り込み、保健所などと合同で患者のチェックを行っていました。前述の通り「要請があれば」ということになりますが、場合によっては、自衛隊は感染症からも国民を守っているのです。ただ、自衛隊ができることは新型インフルエンザの頃と変わりがありません。そこが少し残念です。 WHO(世界保健機関)の発表では、今回、武漢市を中心に猛威を振るっている新型コロナウィルスは、致死率34%程度のSARS(重症呼吸器症候群)とも致死率9%程度のMERS(中東呼吸器症候群)のウィルスともその遺伝子は相違しています。重症化は約25%で、何らかの基礎疾患の既往症か現症のあった患者に限りますが、致死率は約3%程度です。自衛隊は、かつて2009年4月の新型インフルエンザに関して、厚労省からの官庁間協力の要請に基づき、医官、医師、看護官、准看護師、臨床検査技師合計で延べ122人、最大時62人/日を派遣したことがあります。今回も、もし要請があればしっかりと協力していきます。
— 河野太郎 (@konotarogomame) January 24, 2020
WHOの見通しは甘かったのか?
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おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot
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