松山千春にRadioheadの圧倒的エモさ。閉館するストリップ劇場を舞台にした映画の注目度
何度も閉館の危機に陥りながら、多くのファンに支えられ奇跡の復活を果たしてきたストリップ劇場――「広島第一劇場」がついに閉館を余儀なくされるという。広島に実在する劇場を舞台に、ある男と踊り子の禁断の愛を描いた美しく切ないラブストーリーが今春公開される。映画「彼女は夢で踊る」だ。
監督は「鯉のはなシアター」「シネマの天使」「ラジオの恋」などを手がける、広島出身の時川英之氏。公開を前に、時川監督に話を聞いた。
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――「閉館詐欺」と世間に揶揄されながらも粘り強く営業を続けていた「広島第一劇場」が今年、とうとう幕を降ろすことになりました。「ストリップ劇場の閉館」を題材に映画を撮ろうと思った経緯を教えてください。
時川:横山雄二さん、加藤雅也さんと飲んでいるときに、「広島第一劇場という面白くて変わった場所がある」という話で盛り上がったのがきっかけです。私自身、数年前に横山雄二さんの紹介で広島第一劇場の社長さんや矢沢ようこさん、他の踊り子の方々とお会いする機会があり、ストリップ劇場という独特な場所、そこで働く人々の群像劇、そのすべてが面白いなぁと思っていました。
しかし同時に、ストリップという世間と断絶された空想的な世界を守りたいと願う関係者の思いは、一般の人にはなかなか気付かれにくいものだとも感じたのです。
「劇場がなくなってしまう前に、なんとか映画に残したい」。
あっという間に話が進み、その飲み会から3か月後には広島で映画の撮影を行なっていました。
――時代の変遷とともにストリップ劇場の存在は隅に置かれるようになっています。本作で時川監督が伝えたかったことは何なのでしょうか。
時川:知らない人はストリップを風俗のように思っているかもしれないのですが、そうではないということを伝えたい。近年はステージに力を入れており、純粋に踊りが好きで居場所を求めている踊り子の、彼女たちが表現する独自の世界を堪能することができます。
私自身、初めて広島第一劇場でストリップを見たときの感動は忘れられません。古い扉を開き、「いやらしいのかな?」とドキドキしながら劇場に入ると、そこにあったのはエロとは程遠い自己表現の場でした。そうしたストリップのきらびやかな世界はもちろん、社長や踊り子の方々のたくましい生き様などを伝えられたらと思っています。
――本作で映像に力を込めた点についてお聞かせください。
時川:ストリップという妖艶な世界観を映し出すために、映像の美しさや登場人物のムードを意識して制作しました。特に映像にこだわりたくて、カメラマンをオーストラリアの方とフランスの方に依頼し、日本人とはまた異なる美意識から“映像を魅せる”工夫を凝らしました。
社長さんの役を演じてもらった加藤雅也さんもかなり役作りの研究を重ねてくださり、実際の社長を知ってる人が見ても「そうそう、こんな感じ」となるくらいに自分のものにしていたのが印象的でしたね。
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「彼女は夢で踊る」公式サイト
http://dancingdreams.jp/
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