更新日:2020年10月28日 18:03
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貧困から抜け出す策はある。会社、SNS、富裕層を味方につける交渉術

 国税庁の発表によると2018年の日本の平均年収は441万円だ。しかし今、非正規雇用で平均を大きく下回る低収入、貯金もほぼないが、その現実に危機感を持つこともなく好きなことをして暮らす無自覚な“まったり”貧困層が増えているという。仮に自分が同じような境遇に陥った場合、どのようにして抜け出せばいいのか。 まったり貧困で生きる

社会に歩み寄れば手を差し伸べてくれる人はいる

 社会福祉士の藤田孝典氏はこう語る。 「今の日本社会は労働組合がストライキや団体交渉を粘り強く続けたからこそ成り立っています。数は力。弱者は集まって声を上げないと“上級国民”の元に主張は届きません。また、職位も重要。アルバイトはやはり立場が圧倒的に弱いので、アルバイト→契約社員→正社員と少しでも職位を上げることも、交渉力アップの秘訣です。  一方で、実は非正規社員の給与や待遇を把握していないだけの経営者も多く、労働組合を通して交渉するだけで、『え、そんなに給料低かったんだ』と、簡単にベースアップに応じてくれるケースも少なくありません」  多少の訓練期間は必要となるが、スキルや資格を習得して、自らの価値を高めるのは王道の良策だ。 「今、身を置いている業界・社内で報酬アップが望めないなら、転職しかない。例えば医療、介護・福祉のような分野なら普遍的な需要があるため、資格を取得しておく意義が大きいです。さらに、その分野内で報酬単価の高いスキルの熟練度を高めていくのが、手堅い貧困脱出の方法といえますね」

収入アップなしの場合は…

 収入アップなしで家計を改善させようとすると、まず思い浮かぶのは“支出の削減”だが、「単純な我慢による支出削減は続かない」と語るのはファイナンシャルプランナーの田中佑輝氏だ。 「私のところに来る相談者さんたちを見ていると、たいていは3か月で我慢の限界が来て挫折します。支出を減らす前に必要なのは徹底的なシミュレーション。まったり貧困の先にある老後は、“野垂れ死にするか”それとも“何とか生活していけるか”を、客観的なデータをもとに綿密に試算するんです。現実を直視できて初めて、家計改善に取り組むことができます」
女性

※写真はイメージです

 苦しい現状は、ツイッターやインスタグラムなどのSNSを利用して、吐露してもいい。 「特にフリーターや自営業の人には『自己責任でしょ』などと批判の声が届くことも覚悟する必要がありますが、声を上げると手を差し伸べてくれる人や仕事を斡旋してくれる人は意外といるんです。富裕層ほど人脈が豊かで、貧困層ほど乏しいというデータもあります。貧困から抜け出したいなら、SNSを通じて人脈を広げるのもありかもしれませんね」(藤田氏)  声を上げなければ、誰も拾い上げてはくれないのだ。 【藤田孝典氏】 社会福祉士。NPO法人ほっとプラス代表理事。聖学院大学心理福祉学部客員准教授。専門は現代日本の貧困問題と生活支援。著書に『棄民世代』(SB新書)など 【田中佑輝氏】 ファイナンシャルプランナー。アルファ・ファイナンシャルプランナーズ代表取締役。実践的な資産運用が好評。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』(アスコム) 取材・文/高島昌俊 谷口伸仁 辻野祐馬 イラスト/渡辺貴弘
年収100万円で生きる-格差都市・東京の肉声-

この問題を「自己責任論」で片づけてもいいのか――!?
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