更新日:2020年05月04日 12:51
スポーツ

コロナでプロ野球は苦しいが、こんな時こそスーパースターが生まれる

千葉マリンスタンド

本来ならばたくさんのプロ野球ファンで埋め尽くされていたはずのスタンド。今は人影すら見当たらない

 猛威をふるう新型コロナウイルスは、プロ野球界をも大きく揺るがしている。  4月17日、NPB(日本野球機構)は、プロ野球12球団代表者会議の結果、今季のプロ野球セ・パ交流戦中止の決定を発表。また4月23日には、5月上旬の連休明けに目指していた開幕日の設定も依然として“白紙状態”であることを明らかにした。  いまだ見通しのつかない2020年プロ野球開幕のゆくえを、選手たちや球団関係者はどう見守っているのだろうか? 千葉ロッテマリーンズ球団広報の梶原紀章氏に話を聞いた。

選手は自主練習を再開するも、チームとしての活動再開はめど立たず

千葉マリン正面入り口

試合のある日は球場の外にも多くの屋台が並ぶ千葉マリンスタジアム(ZOZOマリンスタジアム)

「3月20日の開幕戦に向けて段階的に盛り上げてきたムードがバサッと断ち切られましたからね。野球が常にある日々がこんなに幸せだったとは……」と梶原氏はため息をつく。 「選手たちは毎年、1月の自主練習から2月のキャンプ、紅白戦、3月のオープン戦を経て体を作り上げ、開幕戦までに徐々にモチベーションを上げていくんです。それがこの状況下では、自宅待機であったり、自主練習であったり、時間差での全体練習であったりと多くの制限の中で行うしかありません。選手のコンディション維持はなかなか難しいです」  4月15日、ロッテ球団は11日に再開していた球場施設を使った自主練習を「人と人の接触を8割減らすことに専念すべき」との理由で中止に。選手たちにも「“不要不急”の外出を控えるように」と促した。 「選手たちにできることは、自宅での体幹トレーニングにストレッチ。環境によっては家の周りのジョギングや坂道ダッシュはできますが、それぐらいしかできないのが実情です。愚痴の一つぐらい出そうなところですが、選手たちと話をするとみんな気持ちを切らさず前向きに取り組んでくれている。頭が下がる思いです」  球団側は4月27日から感染予防を徹底し、選手たちを1組4人の20組に分けて、それぞれが接触することなく使用できる場所・日時を細かく指定することで自主練習を再開した。しかし、チームとしての活動再開のめどは立っていない。

“挑発ポスター”も交流戦中止で自然消滅。プロモーション戦略は見直しに

千葉マリングラウンド プロ野球開幕延期によって大きな影響を受けているのは、選手だけに限らない。球団関係者も同様だ。 「1月の自主練習のやわらかなムードから、開幕3日前の最後の調整や真剣にミーティングしているシリアスな画まで……。開幕に向けて徐々に緊張感が高まるよう逆算してファンに情報発信していくのが、プロ野球のプロモーション戦略のセオリーなんです」  梶原氏は、ロッテ球団が今季ペナントレースに向けて仕掛けていたさまざまな広報活動についてこう語った。 「プロ野球ファンの間で毎年話題となるセ・パ交流戦 の“挑発ポスター”も、交流戦の開催中止でこちらも当然、自然消滅となります。さらに、球団の不気味なマスコットである『謎の魚』も、今年は“第5形態”から“最終形態”に変化を遂げ、本来ならそろそろ発表しているころでした。しかし、いまはとてもこういう話題が通じるとは思えません。せっかくやるのであれば盛り上がるタイミングで行いたい。ベストな時期を見計らって展開するのがいいと思っています。そうなると、来年への延期も考えざるをえません……」  梶原氏によると、ここ10年ほどプロ野球の観客動員数は右肩上がりの傾向にあるという。 「どの球団も女性向けのかわいい応援ユニフォームやグッズ、レディースデー、ファミリー向けの宿泊プランなどを用意するなど、幅広い層をターゲットにしたマーケティング戦略を行ってきました。こうした各球団の地道な企業努力が実っていたんです。そんな、勢いに乗ってきていた中での今回のコロナ問題。今、置かれている状況はさすがに厳しいと言わざるをえません」  外出自粛要請中の現在、ファンに向けて球団ができることは、公式YoutubeやInstagramなどのSNS発信しかない。 「ロッテ球団のインスタでは選手への質問コーナーを作り、さまざまな選手に出演してもらっています。荻野貴司選手への質問は1000件を超え、非常に盛り上がりました。特に選手の『ドラえもんチャレンジ』というドラえもんを描くコーナーは非常にファンから好評となっています。またYouTubeでは佐々木朗希選手をモデルに、体幹トレーニングやストレッチの方法など、家でもできるトレーニングを紹介して話題となりました。ただ、やはりファンが本当に見たいのはプロ野球の真剣勝負。その熱量にはとうてい及ばないというのが正直な感想です」
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“逆境”の時こそスーパースターが生まれる!?
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千葉魂〈vol.6〉マリーンズ挑戦の日々

千葉ロッテマリーンズ広報担当梶原紀章氏が千葉日報運動面で執筆した連載「千葉魂」を一冊の本にまとめました
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