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ユニークな地方ローカル・くま川鉄道。誰でも弾けるピアノが駅舎内に?

 国鉄時代、湯前線が特定地方交通線に指定され、廃止が確定した。沿線自治体が第3セクター鉄道化を決議し、熊本県も合意したことで、1989年10月1日(日曜日)、くま川鉄道として再出発した。あれから31年、2020年の新春に、湯前駅へ行ってみた。※この記事は2020年1月7日(火曜日)に取材したものです。

『田園シンフォニー』に乗って、湯前へ

くま川鉄道

熊本県人吉市は、巨人軍の川上哲治氏、タレントの内村光良氏の出身地

くま川鉄道 くま川鉄道の起点は人吉温泉。JR九州肥薩線の人吉駅に隣接し、構内踏切を渡れば簡単に乗り換えられる。また、駅舎が別々なので、自由通路を兼ねた跨線橋経由において、くま川鉄道のホームへ向かうこともできる。
くま川鉄道

KT-500形気動車は『田園シンフォニー』と銘打ち、在籍5両とも、季節をイメージしたカラーリングを身にまとう

 ホームの券売機で1日乗車券(大人1,200円、小児600円)を購入。大人650円以上の区間を往復するだけでモトがとれる。ちなみに人吉温泉―湯前間の大人片道運賃は700円。  5番のりばから、14時32分発の湯前行きワンマン列車へ。発車すると、肥薩線の線路を走行する思わぬ展開に。一部共用区間が存在するのだ。分岐すると、相良藩願成寺(さがらはんがんじょうじ)へ。隣の肥薩線に駅が設置されておらず、くま川鉄道の独壇場だ。
くま川鉄道

終点湯前へ

 球磨川を渡ると、田園風景が広がる。このまま平地を進み、15時16分、終点湯前に到着した。ホームが両側にあるように映るが、列車の乗降用ドアは駅舎側のみ開ける。反対側は湯前駅レールウィングの一角で、列車の展望台といったところ。ほか、ユノカフェやまんが図書館も併設されており、観光や列車の待ち時間に使えそうだ。  また、ホームには「潮(うしお)の鐘」が2台あり、潮神社にちなむ鐘だという。子宝と安産祈願にいいそうだ。付近には絵馬が飾られている。  1924年に人吉(現・人吉温泉)―湯前間が開業した当初は、宮崎県方面への延伸計画もあり、鉄道省(のちの国鉄)妻線(佐土原―杉安間)をつなぐことで“九州横断鉄道”の形成が構想されていたという。しかし、1984年に妻線が廃止。路線バスに転換され、その夢は叶わなかった。

駅舎内にピアノが?

 列車を降りると、ピアノの音色が心地よく聞こえた。それもなつかしい響きだ。私事で恐縮だが、40年近く前、登校すると、いつもこの曲が流れていた。音階は「♪ミレド、シラソ、ラソファソ♪」だと思うが、耳に残る名曲なのに、いまだ曲名がわからない(曲のジャンルはクラシックだと思う)。
くま川鉄道

大正時代からの味わい深さが旅情をかき立てる

 もっと驚いたのは、ピアノの音色は乗客を歓迎するためのBGMではなく、地元の小学生女児2人が弾いていたことだ。5年生か6年生のどちらかだと思うが、かなりの腕である。  ピアノは9時00分から17時00分まで利用可能で、どなたでも弾けるそうだ。このピアノを使ったコンサート、演奏会の開催もできるらしい。くわしいことは湯前町役場 企画観光課にお問い合わせを。  面白いのは、駅舎内で無線LANが使えること。接続時間は5時00分から23時00分まで。接続IDとパスワードは現地で御確認いただきたい。
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古き良き、味わい深いローカル線
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