くまモン全開「肥薩おれんじ鉄道」の知られざる魅力を味わってきた
2004年3月13日(土曜日)、JR九州最大の悲願であった九州新幹線新八代―鹿児島中央間137.6キロが開業した一方で、鹿児島本線八代―川内(せんだい)間116.9キロは第3セクターの肥薩おれんじ鉄道に転換された。開業から16年、熊本県と鹿児島県の絶景車窓をウリとするローカル線、新型コロナの影響で家のなかで過ごす皆様にネット上で旅気分を御案内しよう。
熊本県八代市に所在する八代駅は2つの駅舎を構える。左側のJR九州駅は昭和レトロ調に対し、肥薩おれんじ鉄道は本社を兼ねており、事務所のよう。ホームはつながっているので、乗り換えに支障はない。
暖房の効いた窓口で「1日フリー乗車券」(2,940円。子供半額)を求めようとする。
「青春18きっぷ(JRグループの企画乗車券)をお使いですか?」
「いえ、今日は使わないです」
職員の思わぬ問いかけに私は即答。肥薩おれんじ鉄道には「おれんじ18フリーきっぷ」(2,100円。子供用なし)という企画乗車券があり、当日有効の青春18きっぷを提示すれば、「1日フリー乗車券」より840円安く購入できるのだ。八代―川内間の大人運賃は2,670円なので、片道利用でもおトクである。
改札を抜けると、0番のりばに川内行きワンマン列車が10時25分の発車を待つ。鹿児島本線時代の普通列車は3両編成の電車で運転されていたが、この列車はたった1両の気動車。それでも空席が多いことに唖然とする。
黒光りの車両は『くまモンラッピング列車3号』で、観光客の誘致に懸命だ。車内はいたるところにくまモンが飾られているほか、ボックスシートのシートカバーもくまモンらしきシルエットが描かれている。私のような遠方からの乗客にとっては、“トクした気分”にさせるだろう。
なお、ラッピング列車の運行スケジュールは、肥薩おれんじ鉄道のHPを御参照いただきたい。
川内行きワンマン列車は、乗客10人を乗せ、定刻通り10時25分に発車。JR九州肥薩線と並走したのち、分かれて球磨川を渡る。
次の肥後高田で早くも3人下車。日奈久温泉で『くまモンラッピング列車2号』の八代行きワンマン列車と行き違う。エクステリアデザインを眺めると、チキンラーメンのパッケージを連想させる。
進行方向右側に八代海が見え、肥後二見を発車すると、海沿いを進む。絶景区間で自動放送がかかり、“オーシャンビュー”をアピールするものの、車内は旅人より地元の人が多く、見慣れた車窓のせいか関心もない様子。徐行サービスやトロッコ列車を走らせば、それなりの集客が期待できそうに思える。
絶景車窓は上田浦発車後まで続き、川内行きワンマン列車は内陸寄りに進む。
九州新幹線に合流し、11時22分、新水俣に到着。新幹線接続駅なのに、降りたのは私だけ。また、乗る人もいない。鹿児島本線時代は初野信号場だったが、九州新幹線開業に伴い、駅に昇格した。ホーム幅が大変狭く、安全柵が設置されている。
九州新幹線の駅を覗いてみると、構内の照明が一部消灯されており節電。こういう姿勢は大いに評価したい。なんでもかんでも明るければいいのではなく、生活や営業に支障のない程度で充分だ。
新水俣には約50分滞在し、九州新幹線は〈つばめ322号〉博多行き、〈さくら407号〉鹿児島中央行きが到着したが、肥薩おれんじ鉄道を使う人は少ない模様。実際、12時15分発の出水行きワンマン列車に乗ったのは、私だけ。新幹線接続駅でありながら、利便性の低さが残念でならない。そこを活かさないと、路線自体の魅力度向上や沿線の活性化にもつながらない。
出水行きワンマン列車は日奈久温泉で行き違った『くまモンラッピング列車2号』。ロングシートに巨大なくまモンが鎮座するほか、吊り手や荷棚のパイプにミニくまモンが飾られている。天井にも、くまモンやみかんのキャラクターが描かれたシールが貼付されており、楽しさがあふれている。
しかしながら、肝心の観光客がいない。乗客は地元の人々が中心なので、見慣れたラッピング車両に新鮮味がないようだ。
水俣で大半の乗客が下車し、一気にガラガラ。鹿児島県に入り、米ノ津で八代行きワンマン列車と行き違う。乗客はわずか3人で出水へ向かう。
再び九州新幹線に合流し、12時42分、終点出水3番のりばに到着した。有人駅だが、運賃の収受は車内で行なうほか、整理券で阿久根・川内方面へ向かう場合、乗り継ぎ整理券が発行される。
出水は自社の運輸部、営業部、車両基地を構える。肥薩おれんじ鉄道から九州新幹線の乗り換えるには、新水俣寄りに建設された跨線橋を経由する。このため、1番のりば側の駅舎は改札が撤去され、自由に行き来できるようになった。
くまモンラッピング列車で出発進行
新水俣で寄り道
くまモンワールド全開のラッピング列車2号
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