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ユニークな地方ローカル・くま川鉄道。誰でも弾けるピアノが駅舎内に?

古き良き、味わい深いローカル線

くま川鉄道

湯前駅舎は築106年

 湯前駅舎は、湯前線開業時に建設された木造建築物だ。2回改修工事が行なわれ、大正、昭和、平成、令和へと続く。2014年にホーム、鉄橋など19か所が文化庁の登録有形文化財に登録された。  すなわち、「“古き良き、味わい深いローカル線”が国に認められた」といってよい。しかし、くま川鉄道の乗客は通学の高校生が多く、観光客が少ないようだ。
くま川鉄道

湯前郵便局

 例えば、多良木駅前に『ブルートレインたらぎ』という、寝台客車を簡易宿泊所に整備した宿泊施設のほか、湯前駅前の湯前郵便局では、旅行貯金や風景印収集ができる。1日乗車券を発売しているのだから、様々な駅にめぐってみるのもいいだろう。“登録有形文化財イコール観光地”という見方もできるのだから。

天才・エイジの元気が出る車両!!

くま川鉄道

色とりどりの車両による、“お・も・て・な・し”

 くま川鉄道の車両は、KT-500形田園シンフォニー。「朝夕は日本一心ゆたかな品格のある通学列車」、「日中は日本一心ゆたかなおもてなし観光列車」として、2014年にデビューした。エクステリアデザインは、下記の通り。 ・KT-501:冬をイメージした茶。 ・KT-502:秋をイメージした赤。 ・KT-503:春をイメージした黄色。 ・KT-504:夏をイメージした青。 ・KT-505:白秋をイメージした白。
くま川鉄道

KT-505の車内

 車内の共通点は、横長のロングシート、乗務員室の向かい側に幼児用展望席を設けられている。あたたかみのある空間を演出するため、木材をふんだんに用いたインテリアデザインも各車異なる。この車両をデザインしたのは、鉄道業界では“超大物”といえるドーンデザイン研究所の水戸岡鋭治氏。“天才・エイジの元気が出る車両!!”がローカル線に新風を吹かせたのだ。  ただ、メンテナンスに相当な手間を要するのか、デビューして6年しかたっていないのに、傷みのある個所が見られた。財源に限りのあるローカル線の厳しい現実が表れている。  新型コロナウイルスの影響で、沿線の高校は5月末まで休校するという。どの鉄道も厳しい経営を余儀なくされているなか、特にローカル線はよりいっそう厳しく、存廃問題に話が及ぶ恐れもある。コロナ収束後、日本の原風景を楽しめるローカル線に乗って、思い出の1ページに残る旅を思う存分楽しんでいただければ幸いである。<取材・文・撮影/岸田法眼>
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