コロナで閉店を決意、銀座イタリア料理店の苦渋「雇用を守れなかったのが悔しい」
7月下旬、平日のランチタイム。東銀座の飲食店が集まるエリアでは、付近に勤める会社員が休憩時間を過ごす店を求めて行き交う。筆者が足を踏み入れたイタリアンレストラン『ラ・ボッテガイア』は、前菜・スパゲッティ・ドルチェのセットで1100円ということもあってか、比較的賑わっていた。
コロナ禍で飲食店の不況が叫ばれるなか、端から見れば好調に思えるこの店。実は、経営者である青池隆明氏がnote(※文章やイラストなどの作品を配信できるウェブサイト)で「閉店のお知らせ」と題した記事をつづり、大きな話題となった店だ。閉店を余儀なくされた飲食店経営者の知られざる実情が伝わってくる。
青池氏は今なにを思うのか……。ランチとディナーの合間に話を聞いた。
7月12日に公開された「閉店のお知らせ」というnoteの内容は、青池氏が経営する3店舗のうち2店舗を閉鎖することに決めるまでの経緯をつづったもの。これまで飲食店が直面している現実をよく知らなかった人たちにもリアルな実情を訴えた。Twitterでも大きな話題となり、たくさんの人が「都心部の飲食の厳しい現状が生々しく書かれていて胸が痛い」「読んでいて胸が詰まる」と感想を述べた。
そこまでの反響があるとは思わず驚いたと話す青池氏は、今回noteでの発信をした理由についてこう語る。
「Facebookでつながっている知り合いの皆さまに、普段はお店の状況や告知、10周年を迎えたことなどを発信していました。今回閉店を決めたこともきちんと報告するとともに、これまでのお礼を伝えたいと文章にしました。しかし、あまりにも長くなりすぎてしまったので、noteのサービスを利用したのです。
飲食店の現実をご存知ない方が多いことに驚くとともに、ここまで当事者が具体的に飲食店の実情を明かしたのは珍しかったことが反響の要因なのではないかと思いました」(青池氏、以下同)
青池氏は『トラットリア・ダ・フェリーチェ』『ラ・ボッテガ・デルマーレ』『ラ・ボッテガイア』の3店舗を東銀座エリアに出店している。しかし、新型コロナウイルスの影響で2店舗を閉鎖せざるを得なくなった。
コロナの影響で10周年を迎えたばかりの店を閉店
「3つの店舗を徒歩圏内にしたのには、スタッフの行き来がしやすい距離にすることで柔軟に対応ができること、そして1店舗が満席になっても、もう1店舗にお客様をご案内しやすいことなどの理由がありました。いわゆるドミナント戦略ですね。ですが、今思うと3店舗をオフィス街・住宅街・東京都以外など分散させておけばよかったのかもしれません」 緊急事態宣言中の営業自粛、そしてリモートワークの推進、さらにはいわゆる「夜の街」を糾弾するような流れのせいか、東銀座エリアからは客が消えてしまった。しかし、郊外の住宅街等では逆にリモートワーク中のランチ需要増や、家族での客数が増えた店もあるという。青池氏はこうしたことを予想できなかったと悔やんでいたが、どんな経営者であっても、今回の新型コロナウイルスに伴う影響を予想することは難しかったはずだ。
インタビュー・食レポ・レビュー記事・イベントレポートなどジャンルを問わず活動するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり店長を務めた経験あり。X(旧Twitter):@KA_HO_MA
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