「この旅にはなんの色気もない」Uber Eats配達員のボヤキが止まらない
僕は普段、日雇い派遣などの仕事で稼ぎつつ、時間を見つけてはタイなどの東南アジアを中心に旅してきた。この状況では海外旅行には行けそうにないが、日本国内ならば比較的自由に動けるようになってきている。旅がしたい。でも、社会の底辺で生きる僕にはお金がない。そこで「Uber Eats」の配達で稼ぎながら国内を自転車で旅するという方法をとることにしたのである。
旅に出て37日目、僕は京都にいた。この日と翌日の38日は2日ともウーバーの配達の稼ぎはいまいちだった。
38日は夕方から京都でウーバーの配達員をしている卓磨さんと数日ぶりに再会し、ラーメン屋で食事した。そのあとは居酒屋に入るほどの金銭的余裕もなかったので、コンビニで酒をつまみを買って夜の四条の公園で飲んだ。
卓磨さんは来年から僕と同じようにウーバーの配達をしながらの日本一周旅行を計画していた。そのことについて語りながらも話題はやがて女のことに移っていく。この旅にまったくなんの色気もないということを僕は愚痴るように話した。
「京都のメイドカフェは行かれました?」
卓磨さんが訊いてきた。
「いえ、まだ行ってないです。一回くらい行ってみようかなとは思ってますけど」
「行ってみますか」
僕はそれに笑いながら曖昧にうなずいた。
39日目。この日は879円というこれまでで最高額のチップを獲得したこともあり、まあまあの収入(5991円)だった。
また、この日ははじめて経験するパターンの配達があった。配達する商品の量が非常に多く、ひとりでは運びきれないので配達員2人で分けて配達するというものである。それで報酬はそれぞれに入るらしい。
商品のピックアップ店舗であるローソンに到着すると、もうひとりの配達員の男はすでに店先で僕を待っていた。店先のベンチにはペットボトルのドリンク、おにぎり、ホットスナック……などのぎっしり詰まった大きなレジ袋が6つも並んでいる。たしかにこの量はウーバーのバッグひとつに収まらない。
「どう分けます?」
「僕はバイクなんで重いほうでいいですよ」
その配達員はそう答えてペットボトルのドリンクなどの入ったレジ袋を取る。そしてそれをバッグに詰め、バイクでぶーんと走り去っていった。
僕もレジ袋をバッグに詰めると、自転車に跨って配達先に向かった。そしてペダルを漕ぎながらこんなことを思った。
協力して配達する相手が女の子だったらよかったのに……。
京都で879円のチップに舞い上がる
他の配達員と商品を分けて配達
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バイオレンスものや歴史ものの小説を書いてます。詳しくはTwitterのアカウント@kobayashiteijiで。趣味でYouTuberもやってます。YouTubeチャンネル「ていじの世界散歩」。100均グッズ研究家。
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