モンスター客の対応に半日がかり。すぐに「謝罪」を選ぶ飲食店長の本音
理不尽な要求に立ち向かえない、日本の接客業。海外であれば「出ていけ!」の一言で済む出来事が、日本では一大騒動になってしまう。いわゆる「モンスターカスタマー」の無理難題が、接客業に携わる労働者を苦しめている。今回は都内大手飲食チェーン店の店長Aさんから、「犯罪スレスレのトンデモ客」に関するエピソードを伺った。
「なぜ日本の接客業は客に対して弱いかというと、結局は“謝ったほうが早い”という構図があるからです」
Aさんは話の冒頭で、筆者にそう断った。
日本人の誰しもがその名を知る大手飲食チェーン店の店長。しかもAさんは、都内にある店舗に勤務する。故に新型コロナウイルスの蔓延で閉塞感に陥る人々の本性を、否が応でも目の当たりにしてしまう。
「我々の店はアルコールも提供しています。従って、店内で酔い潰れたり酒乱を起こしたりする人も当然出てきます。その客が“店員の態度が悪い!”と騒ぎ出したら、こちらとしてはまず謝ります」
酔っ払いが店員に突っかかったら、とりあえず謝罪する。理不尽なように思えても、この選択肢であれば大抵1時間弱で丸く収まるという。
「では、毅然と立ち向かった場合はどうなるか。たまたま最近、そういうことがありました。その客もやはり酔っ払っていたのですが、店員の言ったことに対して“その言葉を紙に書け!”と要求してきました。“お前は俺に対して無礼なことを言った。それを文書にしてお前のサインもつけろ! 証拠として本社に持っていく。お前はクビだ、覚悟しろ!”ということです。誇張ではなく、本当にそう言ってました」
Aさんはこの客を「一筆おじさん」と呼称した。とにかく、どのような返答に対しても「お前の今の言葉を紙に書け!」と要求するからだ。
その後、見かねた他の客が110番通報。警察官がやって来ると、一筆おじさんの態度が途端に変わる。ここで一時的に低姿勢になった。が、警察官が去るとまたしても高圧的な態度を取る。
「“俺はお前らの会社の株主だ。俺に無礼を働いた証拠を持っていけば、お前のクビなんか簡単に飛ぶんだぞ!”と。結局、このトラブルを片づけるのに半日かかりました。半日ですよ? それだったら徹頭徹尾謝罪して、1時間弱で済んだほうが苦労しない……と思ってしまうのは人の情というものです」
謝ったほうが早い
「一筆おじさん」の理不尽要求
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