更新日:2021年02月19日 11:39
エンタメ

モー娘。に青春を捧げた男たち「2ちゃんでの意見交換が最高に楽しかった」

 2月19日から公開される映画『あの頃。』が大きな話題を呼んでいる。作品のテーマは「アイドル」ではなく「アイドルヲタク」。ハロー!プロジェクトのファン(ハロヲタ)がまだ「モーヲタ」と呼ばれていた2000年代初頭、推しの応援に青春を捧げた若者たちの青春群像劇となっているのだ。  当時のヲタは何に対してそこまで熱狂していたのか? 今のアイドルファンと何が決定的に違ったのか? ハロプロファンが他のアイドルファンから特別視される理由はどこにあるのか? 原作本『あの頃。男子かしまし物語』(イーストプレス)著者であり、映画では松坂桃李演じる主人公のモデルになった劔樹人氏を中心に、昔からの劔のヲタ仲間である明大店長氏、アイドルヲタク界に強い影響力を持つピストル氏を交えて激論が交わされた。これぞモーヲタ頂上座談会だ!
モーヲタ座談会

(写真左から、敬称略)明大店長、劔樹人、ピストル

オタ活動が原因で婚約破棄

──そもそも劔さんは、どういう経緯でアイドル好きになったんですか? 劔:僕自身はヲタになったのが結構遅かったんですよ。たしか2002年の末か2003年の春だったと思います。あやや(松浦亜弥)のMVを観たのがきっかけでした。その前にハロマゲドン(※2002年7月、ハロプロで起こった大規模な組織改編。後藤真希や保田圭のモーニング娘。卒業やタンポポ、ミニモニ。、プッチモニのリニューアルが発表され、一気にファンを減らすことになる)も終わっていましたしね。世間的にはすでにモーニング娘。の黄金時代は過去のものとなりつつあった時期で。 ピストル:シングルでいうと、あややが『The 美学』とか『ね~え?』を出していた頃かな。たしかにモーニング娘。と松浦亜弥の人気が逆転していた印象はありますね。あややはCMとかにもどんどん出るようになっていたし。 明大:僕はずっと東京に住んでいるんですけど、関西方面に遠征に行くとき、よくハロプロあべの支部(劔氏が所属していたヲタ集団)の家に泊めてもらっていたんですよね。劒くんが運転する原チャリの後ろに乗って、現場に行ったこともあるし。 劔:映画でも重要な役割を果たすコズミンという僕らの仲間が、明大店長に自分が関連する会社の株を売りつけた事件もありましたよね。たしかあれ、相当な被害額だったんじゃないでしたっけ? 明大:300万円ね(苦笑)。それが全部溶けて、あっという間に米200グラムになった。当時の僕は「あまりにもモーヲタ活動が過ぎる」ということで、結納式の直前に相手から婚約破棄されたんです。その浮いた結婚資金を突っ込んだんですけど、もう泣きっ面に蜂ですよ。涙も出ませんでした。 劔:映画の中では悲劇的な印象もあるかもしれませんが、そういう一面も知っていただくと、より重層的に楽しめるかもしれない(笑)。

『ASAYAN』のドラマ性にやられた

──ピストルさんもモーニング娘。からアイドルに入った口なんですか? ピストル:もともと僕はロックばかり聴いていた人間で、アイドルをまったく通ってこなかったんです。だけど『ASAYAN』(テレビ東京系)で展開されたダイナミックなドラマで、モーニング娘。に完全にやられちゃいましてね。なっち(安倍なつみ)が鈴木あみ(現・鈴木亜美)にシングル対決でボロクソに負け、その後、救世主として後藤真希が現れるというあの神懸かり的な物語性! FCに入ったのは、おそらく『セカンドモーニング』が出たタイミングだったと思う。 明大:セカモー! あれは歴史に残る大名盤ですよ。 ピストル:うん、僕も『セカンドモーニング』こそが全アイドル歌謡の中でも最高傑作だといまだに信じています。それから現場デビューということに関しては、後藤真希のお披露目イベントが最初でしたね。今思うと、2ちゃんねるの存在も非常に大きかったと思うんです。2ちゃんの歴史というのは、ハロプロの歴史とほぼイコールですし。もっとも僕自身は2ちゃん狼板のバッシング文化よりは、ファンサイト寄りの立ち位置でしたが。いずれにせよ、ハロプロを題材にして意見を戦わせるという行為が最高に楽しかった! 劔:当時、テキストサイトは「テキサイ」と呼ばれていましたよね。あとはヲタクが集まってのトークイベントも盛んだった印象があります。今冷静に振り返っても、ものすごく筆が立つ人、弁が立つ人がモーヲタ界隈に集まっていたなと思う。 明大:2004年にmixiが登場したことでヲタク同士のやり取りも大きく変化しましたね。さらに交流が活発になった記憶がある。2ちゃんねるとmixiが巨大化していった理由のひとつとして、モーヲタの存在があったのは間違いないんじゃないですか。 劔:2ちゃんねるの黎明期って、ジャンルでいうと「生活」「芸能」それに「モー娘。」……この3つくらいしか盛り上がっていなかったですからね。
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出版社勤務を経て、フリーのライター/編集者に。エンタメ誌、週刊誌、女性誌、各種Web媒体などで執筆をおこなう。芸能を中心に、貧困や社会問題などの取材も得意としている。著書に『韓流エンタメ日本侵攻戦略』(扶桑社新書)、『アイドルに捧げた青春 アップアップガールズ(仮)の真実』(竹書房)。

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