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ミャンマー市民を虐殺する国軍と、日系企業が商売を続ける愚。数年後にすべてを失う

2021年2月に発生したミャンマー国軍によるクーデターから、すでに半年以上が経過した。ミン・アウン・フライン総司令官が率いる国軍の軍評議会は、抗議活動に参加する市民らに戦闘用の重火器まで使用し弾圧、現在(10月初旬)までに子供を含む1100人を超える死者を出している。

ミャンマーは本格的な内戦に突入した

しかし9月7日、ミャンマーの民主派議員と少数民族により樹立された国民統一政府(NUG)のドゥワ・ラシー・ラ大統領代行はオンラインで演説を行い、ミャンマー国軍に対する戦闘開始(「D-Day」)を宣言した。これにより、ミャンマーは本格的な内戦に突入したのだ。
ドゥワ・ラシー・ラ大統領代行

ドゥワ・ラシー・ラ大統領代行はオンラインで演説を行った(写真提供:MYANMAR JAPON、本人のフェイスブックの動画より)

クーデターによる国軍の市民虐殺から民主派の反撃により内戦へと突き進むミャンマー。その最新状況を、現地のニュースを日本語で配信する「MYANMAR JAPON」代表で、7月に『ミャンマー危機 選択を迫られる日本』を上梓した永杉豊氏に解説してもらう(以下、永杉氏による寄稿)。 ミャンマー危機

暗い平穏の裏で、数十万人の避難民が

2020年11月のミャンマー総選挙で圧勝したアウン・サン・スー・チー氏や民主派議員は、クーデター発生後に逮捕・拘束され、さらには国軍や警察隊による市民の虐殺や不当逮捕などが今も拡大している。現在までに8400名近くが不当に逮捕され、現在も6700名以上が拘束されたままだ。「虚偽情報」を流布した罪で、多くの市民や報道関係者が拘束され続けている。 こうした国軍の弾圧により、デモなどによる表立った抗議活動は影を潜め、市民生活はクーデター以前に戻ったかのように見える。しかし、それは抑圧された市民が息を潜めた「暗い平穏」が続いているだけのことである。
国軍による空爆、重火器での焼き討ちから避難してきた人々

国軍による空爆、重火器での焼き討ちから避難してきた人々(写真提供:Radio Free Asia)

その一方で今年5月に、民主派のNUGは少数民族の軍隊を中心に構成された人民防衛隊(PDF)の設立を発表し、ヤンゴンやマンダレーなど都市部の多くの若者も軍事訓練に志願している。7月以降は国境付近の街などで国軍とPDFによる衝突が頻発するようになり、国軍側には一度に70名を超える死者が出た戦闘も起こっている。 その一方で、国軍はPDFが潜伏しているとされる村を空爆したり、重火器で焼き討ちを行なったりして、数十万人規模の避難民が発生している。
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キリンの合弁会社でも爆破事件
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ミャンマー及び日本でニュースメディアを運営する、ミャンマー情勢に精通した専門家。ミャンマーの現地ニュースを日本語情報誌とインターネットニュースで配信する「MYANMAR JAPON(ミャンマージャポン)」のCEO。著書に『ミャンマー危機 選択を迫られる日本』。日本の国会議員とミャンマー民主派NUG(国民統一政府)閣僚との橋渡しも務める。

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ミャンマー危機 選択を迫られる日本

「この一冊で、過去と今のミャンマーのすべてが理解できる!」

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