俳優・加藤雅也が語る、挫折や喪失を乗り越える術。ネットの時代も「直接の関係は大切」
今や『メンズノンノ』モデルは、人気俳優のひとつの登竜門になった。その創刊号に登場し、モデルとして活動したのち、俳優として存在感を発揮し続けている加藤雅也(58)。現在は、出演映画『軍艦少年』が公開中だ。
――妻を亡くし喪失感に打ちのめされている役ですが、共感できましたか?
加藤雅也(以下、加藤):もし現実なら玄海のようになると思います。「俺は自分で全部できてるんだ」と思っていたのに、彼女を失った時に「すべてあの人がいたからできてたんだ」と、初めて気づく。生活面だけじゃなくて、結局心の拠りどころだったんですよね。
すごく偉そうにしたり、威張ったり強がったりして生きているけれど、結局帰る場所、彼女がいるからできていた。心の拠りどころがなくなった人はこの映画の玄海のようになるんじゃないですかね。失って初めて気づくことってみんな一度はあると思います。
――愛する人に限らず、自分の体の一部でも、仕事でも、何かを失ったことのある人はたくさんいると思います。本作の玄海は、周りの友人が支えてくれたのが大きいですね。
加藤:何かあったときには、やっぱり人が支えてくれるんですよ。今はネットの世界があるからと思っている人もいるかもしれないけれど、やっぱり直接の関係は大切です。普段メールでやりとりしているから大丈夫じゃなくて、電話で話したり直接会ってみたりの積み重ねってあって、それを拒否して生きてきたら、何かあったときに、だれも助けてくれないよね。
――玄海はその辺はちゃんと大切にしてきたのでしょうかね。
加藤:彼があまりしてこなかったとしても、きっと奥さんが内助の功でしてたんじゃないですかね。あと、彼自身、自分でなんでもできているような顔をして、彼女に頼っている自分に実は気づいてたんでしょうね。だから彼女がいなくなることへの拒否反応が出たんでしょう。
「ガキ☆ロック」や「セブン☆スター」などで知られる柳内大樹の青春漫画を実写化した本作は、長崎・軍艦島の見える街に暮らす父子が、大切な家族を亡くし、喪失から再生へと向かう姿を描く。
主人公の高校生・海星(佐藤寛太)の父で、最愛の妻を亡くした男・玄海を演じた加藤にインタビュー。大切なものを失った男の思いに始まり、何かを失った人や壁にぶつかっている人へのアドバイス、社会を生き抜くために必要な術をうかがった。
失って初めて気づくことがある
ネット中心の世界でも「直接の関係は大切」
ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):@mochi_fumi
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映画『軍艦少年』はヒューマントラストシネマ渋谷他にて全国公開中
(C) 2021『軍艦少年』製作委員会
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