「職種なんてただの概念」「転職回数も関係ない」転職7回で気づいた“会社員の常識”の壊し方
「文系出身だから理系の職種は無理とか、転職回数が多いと不利になるとかって、実は決めつけなんです。確かに旧来型の日本企業ではそうですが、伸び盛りの新しい会社ではそんな“常識”に関係なく活躍する人がたくさんいました」
そう話すのは、ビズリーチ、メルカリ、スマートニュースという急成長ベンチャーを渡り歩いてきた、森山大朗氏だ。実は28歳の頃に無職になり、月収14万円のアルバイト生活をしていたという彼。しかし、そこから無職を脱し、これまでに7回の転職をするなかで、「会社の成長性」に注目しながら転職によるキャリアアップを果たしてきた。
国内屈指の急成長ベンチャーで働くなかで知った「働き方の新常識」や、自分の体験から得た転職、キャリアアップの秘訣を、著書『Work in Tech!ユニコーン企業への招待』で明かしている森山氏。メルカリなど急成長する会社のなかでは、一般的には難しいとされる「社内でのジョブチェンジ」を軽々と行う社員も多く、そんな光景を見ているうちに「会社員の常識というのは、思い込みにすぎない」と感じはじめたという。
普段は知りえない、爆発的に伸びる会社の「働き方の新常識」を紹介してもらう。
急成長企業では、一般的には難しそうな「ジョブチェンジ」を果たすメンバーも少なくありませんでした。メルカリに在籍していた頃、英会話講師として入社したメンバーがエンジニアに転身した例もあります。
元々、社員向けの英語トレーニングを担当する講師だったメンバーが、社内で開催されたハッカソン(通常業務から離れて何かをつくる社内イベント)に参加。それまで人がやっていた、社員同士の交流を図るランチのスケジュール調整をプログラミングで自動化して見せたのです。
それがハッカソンで入賞したことで、社内でエンジニアに転身するきっかけになりました。もし彼が当時、エンジニアとして通常の選考を受けていたなら、さすがに経験不足で採用されなかったはずです。
機能だけを見れば、社内エンジニアがその気になればつくれたレベルかもしれません。しかし、当時は誰も目をつけていなかった「具体的な社内業務」を、独学で学びながら、たどたどしくともコードを書いて解決してみせたことが大きく評価されたのです。
ほかにも、職種という枠を超えて活躍する人をたくさん見てきました。CS(カスタマーサクセス)担当のメンバーが、必要にかられてSQL(データベースを操作するプログラミング言語)を学んで仕事をするうちに、社内でデータアナリストやプロダクトマネージャーにジョブチェンジし、後にその職種で転職した例もあります。
こうした光景を見ていると、もはや職種というのはただの「概念」でしかないと痛感します。僕らが日頃から使っている「職種」という概念は、もしかしたら、コンビニに売っている「おにぎり」みたいなものかもしれません。
それは誰かが、どこかの時点で発明したジャンルでありレシピです。今や、コンビニおにぎりの定番人気である「ツナマヨ」だって、ある時までは存在しなかったはずで、誰かが考えたから、棚に並んでいるのです。
そうではなく、自分の手で、自分のおにぎりを握る――つまり、新たな役割をデザインしたり、職種を再定義して活躍する、そんな働き方も今後は広がっていくかもしれません。
「エンジニアになるにはどうしたらいいか?」といった職種軸での憧れを捨て、勤め先での具体的な困りごとや面倒な業務を探し、解決に向けて動きましょう。
そのためにコードを書く必要があれば、そこで学べばいいのです。
なぜなら、エンジニアとは単にコードを書く人のことではなく、「課題解決のために技術を活用できる人」のことだからです。その課題を見つけて技術で解決できれば、今のあなたが何者だろうと関係ありません。
誰かが決めた「職種」という枠に自分を無理に当てはめて考えるのではなく、とにかく成果を出すことに焦点をあてる。ジョブチェンジの機会は、そこにこそ転がっています。
急成長企業で働く人たちの学歴は驚くほど多様性に溢れていて、高校卒や専門学校卒、大学卒、大学院卒、海外MBAホルダーに至るまで、様々なバックグラウンドを持った人材がチームで仕事をしています。
後になって「実はすごい経歴の人だった」と知る機会はあるのですが、学歴が評価を左右したり優遇につながることはありません。
個人的な観測範囲では、華々しい経歴の人より、むしろちょっと変わった経歴の人が多いのが特徴と言えるかもしれません。
評価は、期待成果としての「アウトプット」と、プロセスとしての「スループット」の2つの要素による貢献度の大きさで測られます。
給与レンジは役職自体ではなくグレードによって定義され、グレードごとの期待に対して貢献が大きければグレードが上がり、年齢や入社年次に関わらず、責任ある重用なポジションを任されます。
評価と学歴が関係ない以上、誰もそこに興味が沸かないのはごく自然なことです。
選考時に「転職回数」もさほど気にしません。なぜなら、インターネット領域においては変化が速いので、自然と1社あたりの在籍期間が短くなるからです。急成長企業であれば在籍2年でも平均水準で、3年務めたら長いほうだと思います。
それより大事なのが、「企業カルチャー」との相性です。どれだけ優秀で、ピカピカな経歴の人でも、自社のカルチャーと合わなければ長く活躍することは難しいからです。
逆に、僕のように転職回数が多くても、会社が求めるスキルと経験があり、カルチャーフィットさえしていれば、思いっきり仕事ができるのが醍醐味なのです。
<構成/秋山純一郎>早稲田大学卒業後、リクルートや新規サービスの立ち上げを経て2013年に株式会社ビズリーチに入社し、求人検索エンジンの開発を担当。2016年から株式会社メルカリでJP/USの検索アルゴリズム改善やAI出品機能を開発しHead of Data/AI/Searchとしてエンジニア組織を統括。2020年からスマートニュース株式会社でテクニカルプロダクトマネージャーとしてダイナミック広告の開発をリードしつつ、メルカリShopsを開発・運営する株式会社ソウゾウを支援。SNSでは「たいろー」名義でテック業界の動向や転職、キャリアに関する自身の考え方を発信し、人気アカウントになっている。初の著書『Work in Tech!ユニコーン企業への招待』が発売中。Twitter/@tairo、Voicy/「ユニコーン転職ラジオ」
■職種は「おにぎりの種類」のようなもの
■転職回数や学歴も「みんな気にしない」
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