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「業務経験がないなら勝手に学んでしまえばいい」独学したスキルを転職で活かす方法とは?

「これまでは皆さん、『会社で業務に従事して、初めてスキルと呼べる』という認識だったでしょう。しかし、インターネット上で様々なサービスが生まれた現在では、『スキルや経験が独学でも積める』という時代に変わってきています。個人が独学で積んだ知見も十分に価値があるのです」  そう話すのは、ビズリーチ、メルカリ、スマートニュースという急成長ベンチャーを渡り歩いてきた森山大朗氏だ。SNSでは「たいろー」名義で転職やキャリアに関して発信し、その独自のキャリア観で人気を得ている。

森山大朗氏。これまでビズリーチ、メルカリ、スマートニュースというユニコーン企業3社を渡り歩いてきた

 そんな森山氏だが、28歳の頃は転職に失敗し、飲食店アルバイトで食いつなぐ生活だったという。そこからキャリアをV字回復し、国内屈指の急成長ベンチャーを渡り歩くまでになった。その秘訣とは何か? 森山氏の著書『Work in Tech!ユニコーン企業への招待』から、個人が独学した知識を転職に活かす方法を紹介する。

ネットサービスの登場で「誰でも学べる時代」に

 少し前にSNSのフォロワーさんからこんな連絡をいただきました。 「今は飲食店で料理人をしています。しかし、将来的にはウェブマーケティング業界へ転職したいのですが、どうしたらいいと思いますか?」  そもそも「ウェブマーケティング業界」というのが抽象的ではあるのですが、つまるところ「デジタルマーケティングに関わる仕事がしたい」ということだと思います。せっかくなので「料理人からマーケターに転職する」というキャリアチェンジを例題に、彼はどうすればその仕事に就けるかを考えてみましょう。  まず、僕の肌感覚かもしれませんが、料理人からデジタルマーケティングの仕事に一足飛びで転身するのは難しい話です。採用者の視点に立つと、「料理人として頑張ってきました」と言われても、なかなかそれがマーケターの仕事に役立つようには思えないからです。  ただ、チャンスはあります。料理人をしながら“勝手に”ウェブマーケターとしての経験をつくればいいのです。  インターネットは資格で制限された世界ではありません。誰でも勝手に実績をつくることができます。今回のケースなら、TikTokやYouTubeで料理人チャンネルを立ち上げて、視聴者を伸ばすために試行錯誤してみるのが最も速いと思います。  すでに料理人の動画チャンネルがいくつもあるように、プロの料理人のレシピや作り方には大きな需要があります。普段から料理をする機会が多い主婦の方や、パートナーの誕生日に手作りの料理を振る舞いたい人、もしくは現役の料理人だって興味があるでしょう。  自分の料理動画を上げてみて、どうすれば多くの人に観てもらえるのか、視聴時間を伸ばすにはどうしたらいいのか、適切な尺はどのくらいなのか……と試行錯誤してみる。

重要なのは「成功」よりも「失敗経験」

 そして、ここが重要なのですが、「身銭を切って」自分で広告を出稿してみてください。管理画面で設定を行えば、すぐに広告が出せます。そこから様々な学びが得られるでしょうし、そこで自分の頭で考えて実践した経験そのものが価値になります。  重要なのは、必ずしも動画がバズったり、チャンネル登録者数を大幅に増やす必要はないということです。要するに、成功まではしなくてもいい。その代わり、尋常じゃないほどの量をこなしてください。 「こんな仮説を立てて実行してみたけど、うまくいかなかった」 「失敗を通して、こんな学びが得られた」  そんな大量の失敗談があれば迫力も出てきますし、十分に面接のネタになります。そうしたら次は、その知見を自分のブログやnoteに書いて発信してみてください。PV数やSNSで拡散する努力を重ねることで、「自分が得た知見をわかりやすく不特定多数に伝えるにはどうすればいいのか」という気づきが得られます。  そして、いざデジタルマーケティングの仕事に応募する際には、一連の発信活動での経験を堂々と話せばいいのです。 「自分でいろいろと試行錯誤して発信を続けましたが、ここまでが限界でした。御社のような企業で働いて、実戦経験が積みたいと思います」  そのように話すだけで、面接での説得力は段違いです。デジタルマーケティングの仕事がしたいと言いつつ、Youtubeも、TikTokも、noteもやっていない人よりも言葉にリアリティがあるし、実際に仕事としてやっている人と同じ土俵に立って会話ができます。
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「希少性」と「珍しい」を間違えない
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早稲田大学卒業後、リクルートや新規サービスの立ち上げを経て2013年に株式会社ビズリーチに入社し、求人検索エンジンの開発を担当。2016年から株式会社メルカリでJP/USの検索アルゴリズム改善やAI出品機能を開発しHead of Data/AI/Searchとしてエンジニア組織を統括。2020年からスマートニュース株式会社でテクニカルプロダクトマネージャーとしてダイナミック広告の開発をリードしつつ、メルカリShopsを開発・運営する株式会社ソウゾウを支援。SNSでは「たいろー」名義でテック業界の動向や転職、キャリアに関する自身の考え方を発信し、人気アカウントになっている。初の著書『Work in Tech!ユニコーン企業への招待』が発売中。Twitter/@tairo、Voicy/「ユニコーン転職ラジオ

Work in Tech!ユニコーン企業への招待

テクノロジーに殺されない、働き方&キャリア実践論



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