“バーチャル空間で踊る”クラブは定着するのか?コロナ苦境に喘ぐ業界の策
コロナ禍が長引き、あらゆる業界でオンライン化が進んでいる。とりわけ、リアルだからこそ味わえる熱狂や感動、陶酔感を味わえるエンタメ業界も、思うような興行ができず、苦境を強いられる状況が続いた。それは、ナイトライフエコノミー(夜間経済)に貢献するクラブカルチャーにも大きな影響を与えている。
最近では、徐々に復調の兆しが見られるが、全盛期に戻るのはまだ先になる見通しと言えるのではないだろうか。そんななか、NFTやメタバースなどの最先端技術を用い、クラブカルチャーの新たな布石を打とうと試みる会社がDiscoverFeedだ。
渋谷さんは18歳からDJとして、クラブを中心に活動を始める。
「DJ SHIBUCHIN」名義で精力的にDJの現場をこなし、さまざまなクラブ行脚をしていくうちに、EXILEのMAKIDAIと出会うことになったという。
「当時はまだ、J Soul Brothersとして活動していた頃で、MAKIDAIさんと度々会うような仲になっていきました。ただ、その後結成したEXILEが飛ぶように売れたこともあり、一時は親交がストップしたんですが、2003年ごろにMAKIDAIさんがラップグループを立ち上げたいと考えたときに、トラックメイカーやDJが必要だということで、再び僕に声がかかったんですよ。そうして結成したのが『RATHER UNIQUE(ラザー ユニーク)』でした」
RATHER UNIQUEの一員として抜擢された渋谷さんは、アーティスト契約でLDHに社員として参画することになる。
オーバーグラウンドを賑わすEXILEとは一線を画し、いわばアンダーグラウンドな世界観を大切にしたグループで、2003年から2006年までの3年間はライブに帯同し、DJとして仕事をこなしていたという。
だが、2006年にEXILEの当時ボーカルだったSHUN(清木場 俊介)が脱退し、第二章として再出発しなくてはならなくなったことから、RATHER UNIQUEの活動は休止することに。
それ以降、渋谷さんは作家契約に切り替え、LDHに所属するアーティストへの楽曲提供を2011年まで行っていたそうだ。
「LDHで契約していた頃は、本当にいろんな経験をさせてもらいました。そのなかで、自分として確固たる信念を持ってやっていたのは、クラブDJというスタンスを貫くことでした。いわゆる“売れ線”を追わず、海外の最先端のサウンドを追い求めていたんです。他方で、当時のEXILEはどんどんグループメンバーも増え、拡大していくフェーズで、次第に自分の考える音楽性と合わなくなってきた。そこで、さらなる自分のキャリアアップや可能性を考えて、2011年にLDHを離れてフリーとして活動するようになったんです」
フリーランスになってからは、クラブDJとしての出演やクラブイベントの制作などを主軸に生計を立てていったという。
しかし、2020年に突如として世界中を襲った新型コロナウイルスのパンデミック。クラブ業界に大きな衝撃が走った。
「自粛やイベント中止などを取り決める流れが、クラブ業界全体に広がったことで、僕らDJやイベンターは相当困ってしまいました。このままだと、生活していけなくなるなと思い、色々と試行錯誤した末に17LIVEやBIGO LIVEなどの配信アプリに目を付けました。
BIGO LIVEは日本ではあまり浸透しませんが、グローバルのライブ配信アプリでは最大手なんです。こうしたアプリを使って、DJのライブ配信をいっとき行っていたんですが、やはりどうしても長続きしなくて……。コロナ禍で、何かクラブ業界に一石を投じられるものがないかと考えていたところ、メタバース事業の話が舞い込んできたんです」
渋谷さんは、DiscoverFeedの前身であるRAVE ASIA JAPAN時代に、日本のガールズDJをランキング付けし、フックアップしていく「DJane Mag JAPAN」の運営に2019年より携わっていた。
そんななか、イスラエルのクラブミュージック専門メディア「WE RAVE YOU」から、「女性DJを使ったコンテンツで、メタバースで何かできないか」と打診があったという。
「DiscoverFeedはクラブをメタバース化し、バーチャル空間でイベントをやることで、リアルでクラブに行く時とは違った体験を味わえるようなサービスを目指しています。デジタルツイン(現実世界で収集したデータを、デジタル上で再現する技術)のリーディングカンパニーであるMatterport社と連携し、現実世界の実写を使い、レイヤーを重ねていくことで、臨場感溢れる空間にアバターDJが登場し、バーチャル空間上でイベントを楽しめるようになっています」
同社の取締役COO・渋谷幸史さんは、EXILEの元メンバーであるUSAとMAKIDAIが率いる音楽グループ「RATHER UNIQUE」のDJを務めていた人物である。
長くクラブカルチャーやナイトライフの活性化に勤しんできたが、コロナ禍では一時、多くのDJやイベンターと同様に仕事がなくなるほどの危機に直面していたという。そんな渋谷さんは、いかにしてメタバースに活路を見出したのか。
クラブ業界の現状やメタバースを活用した先にある未来像について話を聞いた。
EXILEのMAKIDAIに声を掛けられ、RATHER UNIQUEの一員に
コロナ禍で苦境に立たされた時に、メタバースの可能性を知る
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1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている
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