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世界の富裕層だけが知る「プライベートバンク」とは?その実態に迫る

コロナ禍においても富裕層はますます裕福になっていることが明らかになった。彼らは、最低でも3億円や10億円以上の金融資産を有する顧客向けに特化した「プライベートバンク」を使っている。そこではどんな商品やサービスが提供されているのか。知られざる実態に迫る!

コロナ禍で世界の富裕層はいかにして富を増やしているのか

プライベートバンク

写真はイメージです

 お金持ちは、お金を持っているという理由だけでますますお金持ちになる――フランスの経済学者トマ・ピケティが世界的ベストセラー『21世紀の資本』で主張したことが、まさにコロナ禍で起きている。  ピケティ氏らが運営する世界不平等研究所の報告書によると、世界の上位10%の富裕層が世界全体の個人資産の75.6%を占めているという。特に上位1%の超富裕層だけで37.8%を占める。香港で富裕層向けの資産運用サービスに特化したウェルズ・グローバル・アセット・マネジメントCEOで国際金融ストラテジストの長谷川建一氏はこう説明する。 「コロナ禍で富裕層はますます富裕になり、世界の金融資産は“持つ者”に集中しています。ボストンコンサルティンググループの調査によると、’20年末における世界全体の家計金融資産は250兆ドル。これは過去21年にわたる同調査の中で最高額で、前年比8.3%増でした。地域別では北米が47.2兆ドルと最も多く、次いでアジア(日本を除く)が12.4兆ドル、欧州(西ヨーロッパ)が10.3兆ドル、日本は3兆ドルとなっています。’20年から’25年の5年間ではアジアは8兆ドル伸びると推計されており、アジアの富裕層が成長すると予想されています」  北米地域の富裕層は「資産運用」の結果として富や貯蓄が増加するのに対し、アジア地域では「急速な経済成長」に伴って増加していくという特徴の違いがある。

日本の富裕層も拡大している

 コロナ禍で、実は日本の富裕層も増加しているという。 「野村総合研究所の『NRI富裕層アンケート調査』(’20年10~11月実施)によると、富裕層・超富裕層の世帯数も純金融資産保有総額も増加を続け、過去最高となっています。その要因は主に株式などの資産価格の上昇と、金融資産を運用している準富裕層の一部が富裕層に、そして富裕層の一部が超富裕層に移行したため。日本でも富裕層は増加し、格差は拡大しました」
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野村総合研究所「NRI富裕層アンケート調査」(’20年10~11月実施)より作成。コロナ禍でも富裕層と超富裕層は増加している

「貯蓄から投資」というスローガンどおり、さぞ貯蓄から投資が進んでいると思われるが、「この30年で現実にはスローガンとは逆のことが起こっている」と長谷川氏は指摘する。 「総務省の家計調査によると、家計金融資産に占める現金・預金等の割合は、48.7%(’90年度末)から53.6%(’21年9月)に上昇しています。また、家計金融資産に占める株式と投資信託合計の割合も16.9%(’90年度末)から15.4%(’21年9月末)と低下しています。一般的に所得水準が高まるに伴い、家計の資産は現預金などの安全資産から有価証券などのリスク資産にシフトしていくと言われますが、日本ではそれが起こらず、保守的な貯蓄偏重ぶり目立っています」  預金金利は限りなくゼロに近く、しかも金利が上がる見通しも当分ない環境で家計の金融資産の半分以上が現預金のままでは、マス層はそこから抜け出すのは難しい。
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富裕層だけが使うプライベートバンク
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国際金融ストラテジスト。シティバンクなどのプライベートバンク部門を経て、’13年に香港で起業。富裕層向けに資産運用サービスを提供するウェルズ・グローバル・アセット・マネジメントCEOを務める。5月28日に著書『世界の富裕層に学ぶ海外投資の教科書』が発売

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世界の富裕層たちはいかにして富を増やしているのか?

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