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「4月ドラマ不調説」のウソ。視聴率の正しい読み解き方

民放界の視聴率とドラマの現在地

ナンバMG5

「ナンバMG5」番組公式ホームページより

 2022年の4月クールのドラマを「低調」とする声が目立つが、放送に通じた人間は「違う」「間違い」と反論している。どちらが本当なのか。前者の根拠が「世帯視聴率」であることに注目したい。  新聞・雑誌記事で古くから目にするのは「世帯視聴率」だが、日本テレビははもう使っていない。日テレが採用しているのは一昨年3月末から全国での集計が始まった個人視聴率のみ。だから世帯視聴率が良くても悪くても気にしない。  フジテレビでも世帯視聴率は参考に過ぎなくなっており、使うのはやはり個人視聴率。他局もほぼ同じ。理由はスポンサーが世帯視聴率に関心がないからだ。  世帯視聴率は全世帯のうち、どれくらいの世帯が見ていたかの割合。「高齢者1人世帯」も「40代夫婦と10代の子供2人の4人世帯」も同じ1世帯とカウントしてしまう。また、4人世帯のうち1人しか見ていなくても1世帯と数えてしまう。無論、見ていた人の性別や年齢は分からない。  つまり、世帯視聴率は視聴者の「数」も「顔」も浮かび上がらない。これを当てにしていると、若者向けスマホゲームのCMを、高齢者しか見ない番組で流すようなミスマッチが起きてしまう。  だから、スポンサーは世帯視聴率に関心を示さなくなった。ちなみに日本の人口の約6割は50歳以上であるため、世帯視聴率は年齢の高い人が好む番組のほうが上がる傾向がある。

番組関係者が指標にする個人視聴率

 一方、個人視聴率は4歳以上の視聴者がどれくらい見ていたかの割合。正確には個人全体視聴率という。新聞・雑誌記事にある個人視聴率がこれ。1990年代からスポンサー側が導入を強く求めていた。  実際にテレビ局、スポンサーが使っている個人視聴率は4歳以上の全体ではなく、性別、年代等で細かく区切られている。「男女4歳~12歳」「男女13際~19歳」「男性(女性)20歳~29歳」「男性(女性)20歳~34歳」――。    このデータを見ると、同じドラマであろうが、「男性20歳~29歳」の個人視聴率は1.5%で「女性40歳~49歳」は同5%ということが、日常的に起きていることが分かる。性別、年代で番組の好みは違うから、不思議なことではない。  細かく分類された個人視聴率を、13歳から49歳の部分だけ選んで切り取ったものが「コア視聴率」。やや異なる年代で区切っている局もある。いずれにせよコア視聴率は現役世代のもので、購買意欲が旺盛だから、この数字が高い番組はスポンサーに歓迎される。
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全年代を狙ったドラマは絶滅寸前
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放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

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