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「新宿ゴールデン街」で火災発生、景観を変えない“街の防火対策”を聞く

 戦後の闇市を発祥とし、1970年代以降は数多くの文化・芸術の著名人が飲みにやってきた「新宿ゴールデン街」。長屋が連なる独特の景観で、近年では外国人観光客にも人気が高い。  この場所で、2022年12月17日に火災が発生。消火活動の甲斐あって死者は出なかったが、狭い場所に木造建築がひしめく特性から、大火災への発展も心配された。  実際、新宿ゴールデン街が抱える防災上の課題と対策はどうなっているのか。同地を管理する組織のひとつ、新宿三光商店街振興組合の代表理事である成瀬昭氏に話を聞いた。
新宿 ゴールデン街

写真/新宿三光商店街振興組合

ゴールデン街で発生した火災

 今回の火災は、出火当時は無人だった場所だったため、警視庁は漏電の可能性があるとみて出火原因を調べているという。  これについて成瀬氏は「ゴールデン街では、過去のボヤなどの出火原因を見ても、火の不始末よりも漏電が原因となっている場合が多いんですよ」と話す。  実際、電気系統からの出火は過去にも記録があり、同組合のHPを確認すると、2003年にも「約10軒が類焼被災する火事がありました。 四谷消防署の説明によると、有力原因は過剰なタコ足配線が招いた過電流過熱による出火」などの記載がある。  古い建物が密集する同地、電源が少ないため過剰なタコ足配線になってしまうことも多い。また、狭小店舗が多く、コンセント部分が物や什器に埋れてホコリを被ってしまったり、無理な配線をしてしまうことも。こうした状況に、次のように対策を進めていると成瀬氏。 「現在、漏電ブレーカーの設置を進めています。それから、使っていない配線を撤去したり、店舗の配線チェックも進めております」

建て替えによる防火は難しい

 新宿ゴールデン街では、過去にも何度か火災に見舞われている。中でも大きく延焼したのが、2016年4月に発生し4店舗を消失させた火災だ。当時の状況や被害について、成瀬氏は次のように振り返る。   「あの時は、かなり広い範囲が焼けてしまって、20軒近くにのぼる周囲のお店も休業せざるを得ない期間がありました。長いところで半年ほどお店を開けられないところもあって大変でしたね。しかも物騒なことに、出火原因は放火だったんです」  この火災は、同地にとっても大きな出来事だったようで、組合向けの会報にも建て替えも含めた防火対策が進められていることが掲載された。                      しかし、建て替えにあたり、ほかの地域とは異なる事情が存在する。景観の問題だ。木造の低層建築がびっしり並ぶ同地は、終戦直後からの雰囲気を現代にそのまま伝える景観を有している。  文化を残して引き継ぐ意味でも、また、その景観自体に引き寄せられてやってくる人がいるという面でも、簡単に街を刷新することは難しい。
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ゴールデン街の防災は?
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Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

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