仕事

「会社をすぐ辞める20代」に共通する、キャリア志向よりも強い“お客様感覚”

なぜ若者は“ホワイト企業”を去るのか

早期退職

※写真はイメージです

「職場がホワイトすぎて辞めたい、と仕事の“ゆるさ”に失望して離職する若手社会人が増えている」という日経新聞の記事が大きな反響を集めた。以前から「若者がホワイトすぎて辞める」ということは指摘されていたが、果たしてどうなのか。  パーソルが20代社員を対象にした調査結果によると、仕事選びの重視点として「色々な知識やスキルが得られること」が最も高く、そのうえ上昇傾向にある。一方で「休みが取れる/取りやすいこと」「仕事とプライベートのバランスがとれること」は減少した。この調査結果を鑑みると、若者がホワイトな職場を去るのは眉唾ではないかもしれない。  それではなぜ若者は厳しさや成長を求めるようになったのだろうか。『先生、どうか皆の前でほめないで下さい: いい子症候群の若者たち』(東洋経済新報社)の著者であり、金沢大学融合研究域融合科学系教授の金間大介氏に話を聞いた。

コスパ・タイパにこだわる若者

 なぜ仕事に意欲的になったのか聞くと、「そもそも、パーソル総合研究所の調査では『上の年代と比べ、従来の企業従属型ではなく主体的なキャリア形成を目指す価値観を身に付けている』と解釈していますが、やや早計です。それならば、もっとチャレンジ精神を持った若者が世に溢れているべきですが、実際に『やる気に満ち溢れている若者は増えたな』と感じている人は少ないのではないでしょうか」とまず矛盾点を指摘。  そして、ホワイトな職場を去るようになった経緯について、「知識やスキル、能力の取得に対する“ファスト化”にあると思います」と今の若者の価値観から解説する。 「2022年9月に『ファスト教養:10分で答えが欲しい人たち』(集英社)という本が出て、若者を中心とした教養の取得に対するファスト化が話題になりました。簡単に言うと、『手っ取り早く仕事に役立つ教養を身に付けたい』という若者の増加を主張しているのですが、僕も全く同感です。  入門書や専門書を何冊も読んだり、大学の講義に参加したりすることはコスパが悪い。しかし、『〇分でわかる□△解説』といった動画は多いですし、『詳しい人にさっと教えてもらえれば十分』という考えが強くなっています。いわゆるコスパやタイパを計算した行動が目に付くようになりました。僕はファスト化の対象は教養だけではなく、スキルや能力にまで及んでいると考えています」
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“会社は自分を成長させてくれるもの”という価値観が蔓延
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フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki

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