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WBC開幕。侍ジャパンが「韓国戦の勝敗より大事にすべきこと」

 第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が3月8日に開幕した。大谷翔平(エンゼルス)、ダルビッシュ有(パドレス)、日系人のラーズ・ヌートバー(カージナルス)、吉田正尚(レッドソックス)ら4人の現役メジャーリーガーと山本由伸(オリックス)、村上宗隆(ヤクルト)など国内トップが顔を揃えたチームは、3度目の世界制覇を目指している。  過去最強とも呼べるメンバーを揃えた侍ジャパンは、9日の第1次ラウンド・中国戦を迎えた。先発した大谷が投打で活躍し、8-1で勝利。順調な船出と言えるのではないか。続いて10日に対戦するのは、宿命のライバル韓国代表。先発はWBCでは2009年大会以来の登板になるダルビッシュ。メジャーで実績を積み重ねた彼はチームにおいて欠かせない存在になっている。

気さくなダルビッシュがチームをまとめる

 今回の注目はメジャーリーガー4人の参戦だ。惜しくも、大会前に怪我があった鈴木誠也(カブス)の招集は断念したが、メジャーでもトップクラスと評判のダルビッシュ、一昨年のア・リーグMVPに輝いた大谷が参戦したことはことのほか大きい。2月に宮崎で行われた直前合宿ではダルビッシュだけが参加したが、その存在感は際立っていた。  ダルビッシュが若い投手陣に話しかけ、それに答える。若い選手からすれば「雲の上の存在」だが、気さくな問いかけは選手たちを饒舌にさせ、野球談義に花を咲かせた。メジャーリーガー1人が入ったことで、引き締まった。  大きかった1つの要因は侍ジャパンへの注目をダルビッシュ一人が背負ったことだろう。キャンプでは毎日、指名取材が行われたが、ダルビッシュはほとんど全ての日程でメディアの前に立ち続けた。そして、練習の合間や後にはファンへのサインにも応じた。

「自分を特別だと思わない」

ダルビッシュと会話し、そして、その背中を見た若い選手たちは、1人、また1人とダルビッシュに習うかのようにファンのために立った。それは、誰からもリスペクトされる人間の模範的な姿だった。  ダルビッシュはこう話す。 「自分を特別だと思わないこと。ファンの方々も僕らも基本的には同じ人なので。確かに自分たちはいろいろ写真撮影とか、サイン下さいとか言ってもらえますけど、その価値というのは勝手に周りがつくってくださっているもので、本来の価値というのは生まれたときから変わらない。そこに惑わされないで、自分の言動に関しては気を付けるということ」
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見せかけではない「友達のような感じ」
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新聞社勤務を経て、2003年にフリージャーナリストとして活動開始。『Number』(文藝春秋)、『slugger』(日本スポーツ企画)などの紙媒体のほか、WEBでも連載を持ち、甲子園大会は21年連続、日本シリーズは6年連続、WBCは3大会連続で取材している。2018年8月に上梓した「甲子園という病」(新潮新書)が話題に。2019年には「メジャーをかなえた雄星ノート」(文藝春秋)の構成を担当。 Twitter:@daikon_no_ken

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