ストレスフルな韓国で心理学本が大ブーム
ビジネス本ブームの日本。己を鼓舞してくれたり疲れたココロを名言で癒してくれたり、サラリーマンのいかなる悩みも受け止める充実っぷりである。が、裏返せば、現状への不満不安の表れでは? 世界各国、ビジネス本の売れ筋を見れば、その国の経済や社会、文化が見えてくる!
【韓国】長引く不況、密接な人間関係……ココロ癒す心理学本ブーム!
韓国も日本に劣らず、ビジネス本大国だ。韓国で最大規模の書店「教保文庫」を訪れると、書店の入り口付近に広くビジネス書のスペースが確保され、ジャンルごとにコーナーが展開。その充実っぷりは、女性向けビジネス書コーナーもあるほど。その内容は自己啓発系が圧倒的で次に経済や経営の解説書。
「韓国らしいのは処世術の本も目立つことでしょうか。この国ではいかに処世をするかで、出世が左右されると言われています」(ソウル在住韓国人の日本語教師)
また、今、韓国では一大心理学ブームで、4月上旬のビジネス書のランキングを見ると1~5位までが、心理学的アプローチからの自己啓発書である。
「一般に韓国人は、情に脆く感情の起伏が激しい。ビジネスの相手と上手にコミュニケーションをとる能力が、そのままビジネススキルと直結します。また、人間関係を非常に重んじる社会であるがゆえに、悩みや行きづまりを抱えたり、孤独感に陥ることもある。経済的な低迷もありますし、そんな背景から、こうした本がウケるのかもしれません」(同)
商談や交渉の仕方と問題解決の方法を具体的に説く実用性重視の心理本もある。が、ランキング2位は心理学者による『男の物』、3位は精神科医による『私は気ままに生きると決めた』、いずれも傷ついた心の癒し方がメインテーマ。韓国人ビジネスマン、どんだけ疲れてるんだよ!と思いつつ。人のことも言えないわけで。
また、『自分を変える心理学の知恵フレーム』などは、諺や格言を人生の参考にしようというもので、これまた名言ブームの日本との共通項といえよう。
当然、日本のビジネス本のハングル版も多く出版されている。孫正義などの経営者、ソニー、トヨタ、任天堂の企業経営を学ぶ本のほか、自己啓発系では中谷彰宏の本も数多く翻訳され人気だとか。
●『いかに欲しいものを手に入れるか』
ペンシルベニア大教授による自己啓発書『Getting More』のハングル版。人間関係をベースにした、商談や交渉の仕方と問題解決の方法。例えばプロジェクトを進めるとき、取引先のビジネスマンと話すときなど、多くの人が直面する問題と解決方法が記される。自分と照らし合わせて読み進めることができる点がヒットの理由か
●『男の物』
韓国人男性が抱く孤独感や心の寂しさなどを慰める心理学をベースにした一冊。長引く不況で疲れ、どこかに癒しの場を求めている韓国男性のためのいわば「心の保健室」的な本。心理学者であるこの著者の本は第4位にもランクイン。こちらは『遊ぶだけ成功する』というもの。「上手に遊べる人が成功する」と肩の力を抜くことを推奨
●『私は気ままに生きると決めた』
人間関係やコミュニケーションに悩む人たちへ、精神科医がアドバイス。自分のプライドを守りながら、他人の心を動かす方法を心理学的な方法や理論、そして実際の事例を挙げながら解説。学校や職場などで人間関係によって傷ついた心を癒す方法、自分が傷つかずに他人の心を動かせる「関係の法則」が書かれている
※本のタイトルは邦訳が出版されているものは邦訳のタイトルを。そうでないものは、編集部がタイトルを訳しました
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