更新日:2024年01月18日 11:17
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スキー・スノボ人口が激減…今や「冬より夏の来場者のほうが多い」スキー場も

 中小企業コンサルタントの不破聡と申します。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、「有名企業の知られざる一面」を掘り下げてお伝えしていきます。  映画『私をスキーに連れてって』が公開されたのが1987年。バブル期はスキー場に向かう車とバスの凄まじい渋滞に加えて、リフトも大混雑する一大ブームが訪れました。映画が公開された翌年のスキー・スノーボード人口は1800万人。バブル崩壊とともにブームは去り、2019年は7割減少して510万人程度とみられています。  スキー場を持つリゾート施設に勝機はあるのでしょうか?
スキー場

画像はイメージです

アルペンのウィンター用品の売上高は4割に縮小

アルペン

アルペン ウインター用品とゴルフ用品の売上高の変化 ※有価証券報告書より筆者作成

 長野県北安曇郡にあるスキー場併設型のリゾート施設ホテルグリーンプラザ白馬を運営していた奥白馬高原開発が、昨年12月21日に東京地裁から特別清算開始命令を受けました。現在、施設は別会社が譲受して運営しています。負債総額は48億円とみられています。  福島県猪苗代町の磐梯山麓にある猪苗代リゾートスキー場と、グランドサンピア猪苗代リゾートホテルも、3年の休業期間を経て経営を断念。9月12日に破産を申請しました。  集客に苦戦する中、コロナ禍が追い討ちをかけたのです。当然、ウィンタースポーツに関連する商品の売上も落ち込んでいます。  広瀬香美の『ロマンスの神様』を大ヒットソングに押し上げるきっかけを作ったのが、スポーツ用品を販売するアルペン。そのCMは冬の定番ソングとして広く親しまれていました。アルペンの2007年6月期のウィンター用品の売上高は206億300万円。2023年6月期は6割減少して78億8500万円となっています。  しかし、アルペンの会社全体の売上高は2007年6月期の1732億円から、2023年6月期は2445億円へと増加しています。増収に貢献しているのが、ゴルフ用品。このカテゴリーは、667億6000万円から1.4倍の934億6600万円まで成長しました。  今や日本のレジャースポーツは、スキー・スノーボードではなくゴルフが中心なのです。

斜陽産業で増収を達成できるのはなぜか?

 青息吐息とも言えるスキー場業界ですが、異彩を放っている会社があります。日本駐車場開発の子会社、日本スキー場開発です。立ち行かなくなったスキー場を買い取り、再生する事業を手掛けています。  かつて東急が運営していた白馬八方尾根スキー場や、民事再生を経た竜王観光の竜王スキーパークなどを手掛けています。日本スキー場開発は、事業再生の定番であるコストカットによる再建ではなく、リノベーションや広告費を投じて集客を強化。増収によって再生させているのが特徴です。  事実、コロナ禍を経て売上高は2019年度の水準を上回りました。2023年7月期の売上高は前期比23.9%増の68億9800万円。2019年7月期の売上高は66億2800万円で、4%上回っています。  直近の業績である2023年8-10月の売上高は、前年同期間比9.6%の増収で11億800万円でした。この数字は2019年の同期間の売上高を3割近く上回っています。  オフシーズンの売上高が伸びていることが、日本スキー場開発の強さの一つ。スキー場をオールシーズンのリゾート施設として開放しているのです。
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冬より夏の来場者のほうが多い
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フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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