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「同僚は肋骨が折れていたのに労災扱いにならず…」48歳介護職の苦しみ。部長クラスなのに年収は350万円

管理職の名の下、残業代も支払われず限界まで働かされ、使い捨てにされる……。’08年に「名ばかり管理職」という言葉が生まれてから16年、空前の人手不足の今、多くの中年が職場で苛酷な労働に喘いでいる。その悲惨な現状を追い、日本特有の病理を探った!

3か月に1人辞めていく苛酷な介護の職場

介護・部長クラス(48歳)/年収350万円
救われない中年社畜 地獄の実態

介護職に20年も就いている井沼恭子さん(仮名・48歳)。「中学生と高校生の子供が同時に受験を控えているため、今すぐ転職することも困難」と嘆く

’23年に休廃業・解散した介護事業者は510件と過去最多を記録(東京商工リサーチ調べ)。主な理由は、人手不足による経営不安だ。介護つき高齢者向け住宅で介護士統括(部長相当)を務める井沼恭子さん(仮名・48歳)もまた慢性的な人手不足と超低賃金に喘ぎながらも、倒産寸前の施設を必死に支えている。 「3か月に1人辞めていくけど、最低あと2人はいないと現場が回らない。私自身も現場での介護に加え、部長として請求業務、労務管理など本来2、3部門で行う仕事を任され、ただでさえ給料が低いのにサービス残業が常態化……。 統括(部長)という立場上、若手から残業代を出してと頼まれますが、施設長に伝えても『お前らの無駄話を減らせ!』と、職員が利用者の病状を共有するための話なのに、全然理解してくれない。上長は他業界からスカウトされてきたので介護の現場を知らないから、効率重視、労働者軽視なんです」 「介護職におけるモデル賃金」(厚労省)によれば、部長の想定年収は420万~500万円。井沼さんは、下手をすると100万円以上も安く買い叩かれていることになる。

虐待を疑われての訴訟リスクも

介護職員にはさらなるリスクが降りかかる。 「『365日介護可能!』を謳うウチは重度の認知症の利用者が多く、入浴やトイレの介助のときに暴力を振るわれることも珍しくないので、若いスタッフは敬遠しがち。中堅職員が対応せざるを得ないのですが、脱衣がイヤだと胸を殴られた同僚は、『呼吸するだけで痛い』と言い、翌日病院に駆け込むと、なんと肋骨が折れていたのに労災扱いにならなかった。 介護職はただでさえ虐待を疑われ、下手をすれば訴えられます。だから、暴れる利用者のご家族には、医師の判断の下、気持ちを安定させる精神薬の投与を打診していますが『薬漬けにする気か!』と怒るばかり。身軽な若い職員から、また退職者が出そうです……」 中年は、暴力が吹き荒れる職場に残るしかないのか。
救われない中年社畜 地獄の実態

骨折した同僚の診断書。年齢的にも十分な安静が必要だったが、職場は慢性的な人手不足で翌日も出社を強いられた

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