美脚トレーナーとして多くの女性のスタイル維持や改善に寄与した実績を持ち、20冊近くもの著書を執筆するなど、美容業界で名を知られる女性がいる。ボディメイクサロン「美・Conscious」代表・久優子（ひさしゆうこ）氏だ。「今年、50歳になるんですよ」と微笑む姿は凛として若々しく、眼差しは今後も新たな挑戦を仕掛けていくであろう企みに満ちている。 　目まぐるしく栄えては消えを繰り返す美容業界において、支持を得てきた久氏の施術は、自身が「こんな内面の深い話を私が聞いてしまって良いのかと思うんです」と語るほど、客にとって身体だけではなく心もほぐれたリラックス効果を提供するのだという。それを可能にしているのは久氏の柔和で寛大な雰囲気と、人生経験のなせるわざ。現在の栄光からは到底想像もできない波乱に満ちた半生について聞いた。 　久氏が現在のサロンを立ち上げたのは30代前半のこと。それまでは足タレ（脚のパーツモデル）やウォーキング講師などを経験し、結婚を機に専業主婦に転じた。2児をもうけたのち、結婚生活が破綻。芸能事務所や芸能アカデミーなどでの仕事などを経験し、その後現在のサロンを開業した。結婚当初の久氏は、「たぶんこんなに明るくなかった」と笑いながら振り返る。 「10代後半からお付き合いしていた人と20代前半で結婚しました。相手は10歳以上年上の人で、彼が言うこと、大切にする理念、すべてが私にとっては新鮮で、尊敬に近い念を持って結婚生活がスタートしました。その頃の私は若かったからか、今のように自分の意見をはっきり言うこともなく、彼や彼の親戚に諸々のご教授をいただきながら、嫁として育ててもらった感じでした」 　久氏の元夫は成功を収めた青年実業家。そればかりか、親戚には自営業で財を成した者が多い家系。なかでも”おじさん”と呼び敬意を払う親戚の豪快さは、今でも懐かしく思い出すという。 「おじさんは親戚のなかでも一目置かれた存在で、彼がいると場が締まるというか良い意味での緊張感がありました。反面、懐の深い優しい人で、離婚したあとも私を気にかけてくださり、とても情に厚い人でした。たとえるならば、映画の『ゴッドファーザー』の世界観そのままという感じでしょうか（笑） 　親戚が集まる食事会は定期的にあり、新顔だった私はおじさんから『優子、ちょっと来い』と呼び寄せられ、『◯◯（元夫）は大変やろ。でも男は弱い生き物や。全身で支えたれよ。それができるのは優子しかおらんからな』と度々諭されました。おじさんをはじめ、彼の親戚からのご教授はメモを取っていて、未だに大切に持っています。礼儀や人に対しての挨拶、立ち振る舞いなど、基本的な姿勢を叩き込んでいただいたおかげで、独立してからそうした面では困ることはなかったほどです。 　おじさんとの思い出で衝撃的だったのは、長男を出産した時のこと。多忙ななか、真っ先に駆けつけてくれて、『お疲れさん、お前もこれで一人前だな』とぶ厚めの封筒に入ったお祝いを置いていきました（笑）。良くも悪くも昔気質の人で、いつも目をかけてもらいました」