「詐欺の被害金、全額回収」は誇大広告?現役弁護士に聞く、信頼できない弁護士の特徴
警察庁の集計によると、SNSを使った投資勧誘を装う「SNS型投資詐欺」と、恋愛感情を抱かせる「ロマンス詐欺」の被害は、2023年に計3846件あり、被害総額が約455億円だったことを、3月7日発表した。内訳は、SNS型投資詐欺が2271件(被害額約277億9000万円)、ロマンス詐欺が1575件(被害額約177億3000万円)で、1件あたりの被害額は、平均すると共に1000万円を超える。詐欺に遭ったとき、駆け込み先として真っ先に頭に浮かぶのは、権限や資格を持っている“警察”もしくは“弁護士”だという人も多いかもしれない。けれどもし、信頼して相談した相手が自分を騙そうとしていたら、どうだろう。
本記事では、問題視されている“資格を持つ本物の弁護士による二次被害”とともに、詐欺や二次被害に遭わないための対策について、詐欺案件を専門に扱う大地総合法律事務所の代表・佐久間大地弁護士に話を聞いた。
詐欺被害者を救済したいとの想いから、通常は相談段階で発生する“相談料”や依頼段階で発生する“着手金”を一切もらわず、被害金額を回収できたときのみ“成功報酬”をもらって活動する弁護士がいる。それが今回、話を聞かせてくれた佐久間弁護士だ。
「どうして成功報酬のみしかもらわないのかというと、詐欺案件で騙されたお金を回収することは、非常に難しいからです。また、たとえ被害金を取り戻せたとしても、それまでに長い時間を要することも少なくありません。
詐欺被害に遭って手持ちのお金がほとんどないという人も多いですし、弁護士への相談というのは一般の方からするとまだまだハードルが高い。そのような状況で相談段階から費用が必要となると、諦めて泣き寝入りする人があふれてしまいます」
佐久間氏と同じく被害者救済に力を注ぐ弁護士も多いなか、資格を持った本物が、弁護士の業務広告に関する規程(以下、広告規定)に違反するおそれのあるウェブ広告を掲載。着手金を支払うも“未着手のまま”といった悪質なケースもあるようだ。
現在、東京弁護士会や大阪弁護士会、名古屋弁護士会などの公式ホームページで注意喚起されているのは、被害金の回収率が極めて低いとされている“国際ロマンス詐欺案件(以下、ロマンス詐欺)”を取り扱う弁護士業務広告に関して。記載された実例のなかには、驚くべきものも多い。
参考(東京弁護士会)、参考(愛知県弁護士会)、参考(大阪弁護士会)
「弁護士会というのは弁護士や弁護士法人を会員としている団体のことで、弁護士は必ずどこかに所属しています。私は“第一東京弁護士会”。東京には他に“東京弁護士会”と“第二東京弁護士会”もありますが、どこが上でどこが下など、違いはありません。
少し話は逸れますが、詐欺のなかには弁護士を語るニセモノに騙されるといったケースもあるでしょう。そういったニセモノを見破るときは、弁護士などの監督や指導などを業務とする“日本弁護士連合会(日弁連)”の公式ホームページで、弁護士名や登録番号を入力してみてください。ヒットしない場合はニセモノです。
資格を持たない者が弁護士の業務をおこなうことは、法律で禁止されています。弁護士にはそれぞれ登録番号というものがあるので、日弁連の公式ホームページに記載の番号と同じかどうかも確認してみてください」
参考(第一東京弁護士会)、参考(日本弁護士連合会)、参考(佐久間大地弁護士のページ)
資格を持つ本物の弁護士が問題となっている今回のケースでは、弁護士が一人しかいないのに24時間365日相談対応と表示したり、「LINEで相談」と表示しているのに弁護士が一切内容を確認せず、事務職員のみで対応するケースもあるようだ。そのため、ロマンス詐欺に限らず、弁護士が出している広告全般に気をつける必要があるかもしれない。
「過去に取り扱ったことがないのに専門弁護士や国際ロマンス詐欺に特化した弁護士などと謳っていたり、過去に取り扱った詐欺事例として事実とは違う内容や架空の事例などを記載していたりといったケースも発覚しています。そしてこのようなケースでは、市民窓口に数々の相談が寄せられていて、懲戒手続きを受けた弁護士もいるのです」
本物の弁護士に騙されるケースが多発?
散見される広告規定違反の悪質な具体例
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意
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