佐々木麟太郎の17年前に“高卒で渡米した”球児は現在…「4人の先駆者」のキャリアを辿る
2月13日(日本時間14日)にアメリカのスタンフォード大学に進学することを発表したのが、高校史上最多の通算140本塁打を誇る佐々木麟太郎(花巻東)だ。
公正取引委員会のメスが入り、2020年「田澤ルール※」が廃止されたこともあって、アマチュア選手の選択肢は増えたように思える。ただ、実際に名の知れた選手が行動に移すことは未だに珍しい事例だ。
本記事では、これまでプロ野球から高校野球まで野球関係の記事や書籍を幅広く執筆している野球著作家のゴジキが、「アマチュア選手の進路」について考えてみたい。
(※日本のドラフトを拒否して海外球団と契約した選手に対し、帰国後の3年間又は2年間、ドラフトで指名しない制度。制度ができた背景は2008年に田澤純一が、日本のドラフト拒否を表明し、メジャーリーグの球団に入団してしまったため)
将来有望な高校球児の従来の進路といえば、ドラフトで指名されるべく、プロ志望届を提出したり、大学進学や、社会人野球のチームに入ったりする選択肢が一般的である。しかし、佐々木が選んだ道はアメリカの大学に入学し、ベースボールの本場でプレーすること。競技は異なるが、まるで『SLAM DUNK』の登場人物のような身の振り方に対して、日本中が驚かされた。
数多くのアーチを描いた佐々木だが、一定以上の水準に満たした投手に苦戦していた印象がある。特に、元々テイクバックの際に肩が入り気味のフォームだったため、最後の夏の甲子園で対戦した湯田統真(仙台育英)が投げていた速球や強度のある変化球への対応が遅れていたことは象徴的だった。
高校生とプロ野球ではレベルが異なるが、柳田悠岐(福岡ソフトバンクホークス)は、2017年までのフォームが肩が入り気味で、身体能力任せの部分があった。しかし、2018年シーズンを機に肩の入りが緩和し、テイクバックからフォロースルーまで滑らかになり、ベテランになった今でも第一線で活躍している。
アメリカでストレートに振り遅れる弱点が解消されれば、大きく化ける可能性は高いだろう。
名実ともに「世界一の野球選手」と言ってもいい大谷翔平(現・ロサンゼルス・ドジャース)。彼もプロ入り前に、高卒での“メジャーリーグ挑戦”を公言していた。しかし、当時北海道日本ハムファイターズの監督を勤めていた栗山英樹氏の説得により、まずは日本で経験を積むことになった。
もちろん、入団前の時点ではOB含め賛否両論がはっきりと分かれていた。これまでのプロ野球の歴史を振り返っても、二刀流として成功した選手は誰一人いない。栗山氏は、辛抱強く大谷を開幕から二刀流で起用し続け、2年目から文句なしのキャリアを積み重ねていくことに繋がる。そして、5年目の2016年には球団に恩返しするかのように投打で圧倒する活躍を見せ、最大11.5ゲーム差をひっくり返して逆転優勝。日本シリーズでも、最初の2戦で2連敗と劣勢だった中で、大谷が3戦目にサヨナラタイムリーを放った。その後、チームは一気に勢いに乗っていき、4連勝で日本一に輝いた。
個人としても、史上初の投打でベストナイン(投手と指名打者で受賞)やシーズンMVPに輝いている。この時の大谷は、日本でやることはほとんどない状態だったと言っていいだろう。その後、2018年にメジャーリーグでデビューし、新人王を獲得。2021年にはシーズンMVP、2023年にはWBCとシーズンMVPを獲得。
大谷の場合は、不世出の才能を信じたファイターズがのびのびとプレーできる環境を設けたことが奏功した。日本のプロ野球でしっかりとキャリアを築きながら、メジャーリーグで活躍できる土台を作った結果が今の成績に結びついている。
「ストレートに振り遅れる弱点」が解消されれば…
高卒での“メジャーリーグ挑戦”を公言していた大谷翔平
野球評論家・著作家。これまでに 『巨人軍解体新書』(光文社新書)・『アンチデータベースボール』(カンゼン)・『戦略で読む高校野球』(集英社新書)などを出版。「ゴジキの巨人軍解体新書」や「データで読む高校野球 2022」、「ゴジキの新・野球論」を過去に連載。週刊プレイボーイやスポーツ報知、女性セブンなどメディアの取材も多数。Yahoo!ニュース公式コメンテーターにも選出。日刊SPA!にて寄稿に携わる。Twitter:@godziki_55
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