「時価総額4000億円」を突破…“キーエンスと並ぶ営業力”を持った企業の正体
中小企業コンサルタントの不破聡と申します。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、「有名企業の知られざる一面」を掘り下げてお伝えしていきます。
2022年6月に新規上場し、時価総額は早くも4000億円を突破して話題になっている会社があります。M&A総研ホールディングス(以下、M&A総研)です。同時期に上場して成長期待が高いVTuberのANYCOLORでさえ、時価総額は2000億円に過ぎません。
M&A総研は、並みいる数々の競合を抑えて勢力を拡大しています。
M&A総研はM&Aの仲介事業を行う会社。会社の売り手となる経営者を見つけ出し、買い手候補との仲介役を果たします。現在、プライム市場にはM&A総研、M&Aキャピタルパートナーズ、日本M&Aセンターホールディングス、ストライクの4社が上場しています。
M&Aが成立した際の報酬体系や、案件を依頼した際に発生する着手金の有無など、料金体系に違いはあるものの、仲介会社のサービスそのものに差別化要因はありません。しかし、M&A総研は競合に対して圧倒的な差を見せつけました。営業利益率が50%を超えているのです。他社は30%台で横並びになっています。
営業利益率30%台でも稼ぐ力は十分にありますが、M&A総研は頭一つどころか二つ三つ飛びぬけている印象です。ちなみに営業力が極めて高いことで有名な会社にキーエンスがあります。この会社の直近通期の営業利益率は54.1%。M&A総研と近い水準です。
この業界は、M&Aのソーシングと呼ばれるターゲット企業の発掘や交渉、満足できる買い手候補の提案、契約成立までのスピードが重要です。つまり、コンサルタントと呼ばれる営業担当者の力がものをいう世界なのです。
M&A総研の2023年10-12月の売上高は49億円。前年同期間比で2.3倍に跳ね上がりました。営業利益も13.9億円から33.5億円へと2.4倍に上がっています。
一方、M&Aキャピタルパートナーズの同期間の売上高は31.6億円でした。前年同期間比1.8%と微増に留まっています。営業利益は3.3億円から5.9億円の8割増となりました。ただし、M&Aキャピタルパートナーズは2023年3月に東京ミッドタウン八重洲に本社を移転しており、先行投資によって販管費が一時的に膨らんでいました。2023年10-12月の営業利益はその反動増が影響しています。本質的な稼ぐ力が高まったわけではありません。
M&A総研はコンサルタントの数を90名から1年で200名まで増やしました。まさに急拡大といったところですが、マネジメントを十分に効かせています。2023年10-12月に成約した件数は75件。前年は37件でしたから、2倍に増加しています。従業員1人当たりの案件数に換算すると0.37。実務やビジネスモデルは関係なく数字だけで見ると、3人で1案件を回しているイメージです。
2022年はこの数字が0.41でした。さほど変化していません。すなわち、従業員が90名から200名に急拡大しても、案件を獲得して成約へと導いているのです。
M&Aキャピタルパートナーズは、2023年10-12月の成約数が43件。従業員数は149名で、1案件当たりに換算すると0.29となります。なお、2022年10-12月のこの数字は0.43でした。従業員数は1年で34名増えていますが、増員に対する成果が出ていません。
営業利益率は「キーエンスと同じ50%台」
従業員数は90名から200名に急拡大
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フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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