いずれ“1兆円企業”になる可能性も。「メガネレンズ国内シェア1位企業」がトップを走り続ける理由
経済本や決算書を読み漁ることが趣味のマネーライター・山口伸です。『日刊SPA!』では「かゆい所に手が届く」ような企業分析記事を担当しています。さて、今回はHOYA株式会社の業績について紹介したいと思います。
3月末にシステム障害が発生し、JINSやZoffへの供給不安で話題となったメガネレンズ大手のHOYAですが、メガネレンズ以外にも内視鏡や半導体材料、光学ガラス材料など様々なガラス関連製品を生産しています。
特筆すべきは製造業にして高い利益率を誇る点であり、独立採算制で各事業部を個別会社のように扱い、無駄の排除を徹底することで高利益率を実現してきました。同社の事業構造や近年の業績について触れていきたいと思います。
HOYAは1941年、光学ガラスを製造する東洋光学硝子製造所として創業されます。45年にはクリスタルガラス食器の生産を始め、62年には現在の主力事業である眼鏡用レンズの生産を開始。追って72年にはソフトコンタクトレンズの製造を開始しています。ちなみにコンタクトレンズ専門店「アイシティ」はHOYAが運営しています。
1973年には東証一部上場となり、74年からは半導体用マスクサブストレート(ガラス基板のこと)の製造を開始し、半導体関連事業に参入。その後、83年には半導体フォトマスク、91年にはHDD用ガラスディスクの供給を始めました。
2007年にカメラメーカーのペンタックスを連結子会社化、11年には同社のカメラ事業を手放しましたが、内視鏡事業はHOYAが引き継いでいます。2009年には採算性の悪かったクリスタル事業から撤退しているのです。
2010年代以降はライフケア分野への投資を加速させ、国内外で内視鏡洗浄装置や医療機器など、メガネレンズや医療関連で様々な企業を買収しています。2022年度における各事業の主力製品と売上高比率は次の通りです。
ライフケア事業(ヘルスケア関連):49%:メガネレンズ・コンタクトレンズ
ライフケア事業(メディカル関連):17%:内視鏡、白内障用眼内レンズ、人工骨
情報・通信事業(エレクトロニクス関連):29%:半導体マスクブランクス、フォトマスク、HDD用ガラス基板
情報・通信事業(映像関連):5%:光学レンズ、LED光源
メガネレンズを主力として半導体ガラス基板も生産するHOYAですが、供給先は主に海外であり、海外売上高比率は76%です。そして2023年3月期の業績は売上高が7,236億円であるのに対し、当期利益は1,688億円と対売上比で23.3%と圧倒的に高い利益率を有しています。通常、企業の純利益率は業種や時期にもよりますが3~5%が相場です。とはいえ任天堂のように工場を持たないファブレス経営をしている訳ではなく、各国に製造拠点を構えています。
高い利益率を実現できる理由として、半導体関連などそもそも付加価値の高い製品を扱っていることもありますが、各製品で高シェアを握っている事が挙げられます。メガネレンズでは業界シェア2位であり、国内ではトップです。
創業は1941年。「アイシティ」も運営
メガネレンズは「業界シェア2位」
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_
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