「投資やビジネスで失敗」「住宅ローンが終わらない」老後も“借金苦”になるシニアが増えている
人生100年時代。「人生最後の職場を探そう」と、シニア転職に挑む50、60代が増えている。しかし、支援の現場ではシニア転職の成功事例だけでなく、失敗事例も目にする。が、今回はシニアの借金事情を解説する。
年金だけでは足りない「老後2000万円問題」が話題となってからだいぶ経つが、貯蓄どころか多額の借金を抱えるシニアも少なくない。いったいどんな借金を抱えてシニアたちは働くのか、ジャンル別に紹介する。
シニア就業に関する取材では、「シニアが働く理由」をよく質問される。生々しい話だが、やはり第一に挙がるのは「お金」だ。
もちろん、やりがいやプロとしての使命感から働き続けたいというシニアもいる。しかし、やりがいなどがあれば、お金はまったく関係ないというシニアはいない。世の中のどこかにいるのかもしれないが、そういったシニアは仕事探しや求人応募はしない。きっとボランティアや自分で起業などをしているのだろう。
お金を得るために働くといっても、得たい金額や経済的な背景とその深刻度合いはシニアによって異なる。働かなければ生活が成り立たなくなるシニアから、十分な年金や貯金があり、自分の趣味などのためにプラスαのお金が欲しいシニアまで様々だ。
中には多額の借金を抱えたシニアも珍しくない。老後の資金が2000万円足りない「老後2000万円問題」がかつて話題となったが、貯蓄どころか2000万円以上の多額の借金を抱えたシニアもいるくらいだ。
今回はそんなシニアの借金事情の一部をご紹介しよう。基本的に仕事を案内する際には、シニアの借金などの話題には立ち入らないが、たまたま事情を聞いた中から、代表的なケースや特徴的なケースを紹介する。
圧倒的に多いのは、住宅ローンが残っているというケースだ。これはシニアに限らず、全世代に共通して多い借金の種類であろう。
住宅ローンは金額も大きく、返済期間も長いため、60代以上でローンが残っていると聞くと返済が大丈夫なのか心配に思ったり、また、そんな年齢でも返し終わらないローンが組めるのか不思議に思ったりする人もいるかもしれない。しかし、ローンを完済する年齢は上がってきているし、60代でも条件が整えばローンが組める。
住宅金融支援機構の「2022年度フラット35利用者調査」によると、フラット35の利用者の2022年の平均年齢は42.8歳となり、前年から1.3歳上がり、10年前の2012年からは3.9歳上がっている。晩婚化の影響が大きそうだが、他にも仕事や収入が安定しないことで、若いうちには住宅を購入しづらい背景もありそうだ。
ちなみに借入時の年齢上限は70歳、完済時の年齢上限は80歳などの金融期間が多いため、頭金を増やすなどして返済期間を短くしてその他の条件もクリアできれば、60代でも住宅ローンが組める。他にも二世帯住宅などを親子リレーローンや親子ペアローンで建てるなど、シニアでもローンを組める手段が意外なほど多くある。
ただし、ローンが組めて、与信が通ったとしても、実際の返済は別問題。収入が減る、病気や介護などで大きな出費があるといったことで計画が狂えば、返済が苦しくなる場合もあるため、余裕のある返済計画を立て、繰り上げ返済を目指すことが重要だ。
実際に、役職定年や定年・再雇用などを経て、思った以上に給料が下がったことで返済が苦しくなり、これまで勤めた会社からもっと待遇のいい仕事への転職を考えるシニアも多い。
2000万円の貯蓄どころか多額の借金?
老後も住宅ローンを返し続ける時代
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50代以上のシニアに特化した転職支援を提供する「シニアジョブ」代表取締役。大学在学中に仲間を募り、シニアジョブの前身となる会社を設立。2014年8月、シニアジョブ設立。当初はIT会社を設立したが、シニア転職の難しさを目の当たりにし、シニアの支援をライフワークとすることを誓う。シニアの転職・キャリアプラン、シニア採用等のテーマで連載・寄稿中
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