スキー場の“倒産件数”は過去最多でも「なぜか好業績」のスノーリゾート会社の存在。稼ぐのは“冬だけ”じゃない
ウィンタースポーツの季節が到来すると、株式市場では「雪が降れば儲かる企業」として注目を集める銘柄があります。なかでも代表的なのが、日本スキー場開発(以下、日本スキー)です。スキーやスノーボードの集客増がわかりやすく業績に結びつくため、多くの投資家から期待されてきました。
現在、スキー場ビジネスを取り巻く環境が厳しいことは周知のとおりです。暖冬による雪不足や国内スキー人口の減少、そしてレジャーの多様化によって、多くのスキー場が閉鎖に追い込まれたり、施設が老朽化して“スラム化”の危機に瀕したりしているのです。帝国データバンクによると、2023年のスキー場の倒産件数は過去10年で最多の7件です。
かつては1970年代後半から1990年代前半まで続いたスキーブームですが、その後の日本経済の不況と共に衰退を続け、閉鎖されたスキー場の跡地は荒れ果て、地域経済に悪影響を及ぼしているケースも珍しくありません。経営を続けるには、ゲレンデやリフトの設備更新、周辺施設の整備など、多額のコストを投じていく必要があります。
その点、“雪が積もったときだけ”に頼るビジネスモデルではなく、通年型の経営戦略によって高い評価を得ていることこそが、同社の強みといえるのです。2024年12月26日には株価が年初来高値を更新し、その勢いは冬季シーズンのみならず、年間を通じた収益拡大への期待を示唆しています。
そこで今回は「冬だけじゃない山岳リゾート」の実力にスポットライトを当てつつ、日本スキーがどのように“オールシーズン”で稼ぐ体制を築いてきたのかを探っていきたいと思います。インバウンド需要の取り込みや大規模投資によるリフト・施設リニューアル、そして次世代の顧客育成など、多彩な取り組みが軸となっています。華やかなウィンターシーズンのイメージの裏側で、雪不足や人口減少という厳しい現実にどう対応してきたのか。その戦略と今後の展望をひもといていきます。
日本スキー場開発の株価は2024年末にかけて順調に上昇し、12月26日に年初来高値を更新しました。その背景には、国内のスキー人口減少や雪不足が叫ばれるなかでも、好調な業績を続けている事実があります。2024年7月期の連結決算においては、売上高82億4500万円と前年同期比で約20%増加し、営業利益は50%増と大幅に伸びました。最終利益を含め、すべての利益段階で過去最高を更新しています。
これほどまでの成長がウィンターシーズンだけで実現できるはずはありません。日本スキー場開発は、長野県の白馬や鹿島槍、竜王といった複数のスキー場を買収し、グループとしての「年間を通じた」山岳リゾート体験を提供できる体制を整えてきました。雪のない季節にも絶景やアクティビティを求めて訪れる人々の需要を取り込み、ゴンドラリフトのチケット収益を柱とした運営を行っているのです。
ウィンターシーズン以外の“グリーンシーズン”での売上高は全体の約3割に達しているとも言われています。これが年間を通じての収益の底上げにつながり、安定経営を可能にしているのです。
スキー場運営企業と聞くと、多くの投資家やアナリストは「雪のあるときだけ儲かる」というイメージを抱きがちです。たしかに以前は、降雪量が多いシーズンにいかに集客できるかが利益を左右していました。しかし日本スキーは、この“冬のみ”のビジネスモデルから脱却しようとしてきました。
その象徴が、夏や秋にも絶景やアクティビティを提供する取り組みです。長野県の白馬エリアでは、山頂や中腹のテラスから見下ろす壮大な景観や、空に向かって大きくこぎ出すような巨大ブランコなどがSNSで話題を集めています。紅葉シーズンにはゴンドラ乗り場に長蛇の列ができ、1時間以上待つことも珍しくありません。これまではウィンタースポーツとは縁遠かったファミリー層やペット連れのお客さんが多数訪れるようになり、秋口でも活況を呈しているのです。
こうした成功事例によって「雪次第」という先入観が払拭され、“通年で収益を伸ばせる企業”として評価されるようになっています。
ストック急上昇! “スノー”だけじゃない会社の実力
「雪のシーズンが始まると株価が上がる」という先入観を超えて
金融ライター、個人投資家。資産運用とアーティスト作品の収集がライフワーク。どちらも長期投資を前提に、成長していく過程を眺めるのがモットー。 米国株投資がメインなので、主に米国経済や米国企業の最新情報のお届けを心掛けています。Webメディアを中心に米国株にまつわる記事の執筆多数
X(旧ツイッター):@usjp_economist
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