ニュース

スキー場の“倒産件数”は過去最多でも「なぜか好業績」のスノーリゾート会社の存在。稼ぐのは“冬だけ”じゃない

インバウンド需要を“いかに取り込むか”が勝負の鍵

 グローバルな観光需要が高まる中、インバウンドをどう取り込むかはスキー場運営においても重要なテーマです。日本スキー場開発の2024年7月期ウィンターシーズンの来場者数(主要7スキー場合計)は165万人と過去最高を更新し、そのうちの約35%がインバウンドです。これは新型コロナの影響が落ち着き始めたとはいえ、以前の水準を上回る数字です。  一方で、課題として顕在化しているのが宿泊施設の不足です。白馬村には古くからのペンションが多く存在しますが、海外からの富裕層やラグジュアリー志向の客層に対応できるホテルの供給が追いついていない状況です。そこで日本スキー場開発は、2024年9月に子会社が保有する固定資産を売却して、その資金をもとにハイグレードなホテルの誘致を進める方針を示しました。譲渡益として約12億円を得ており、これを再開発の原資とすることで、宿泊施設や山麓エリアの魅力を一段と高めようとしているのです。  豪華ホテルやリゾート施設が増えれば、インバウンドのさらなる需要取り込みが期待できます。同時に、地域経済の活性化にもつながるでしょう。特に白馬は、国際的にもスノーリゾートの知名度が高まりつつあるエリアです。こうした戦略的な誘致が加速すれば、ますます観光客が増え、業績拡大の好循環が生まれる可能性があります。

スキー人口減少時代にどう挑む? “次世代”顧客獲得への地道な種まき

 日本国内に目を向けると、長らく続くスキー人口の減少がスキー場経営にとって深刻な課題となってきました。若年層のウィンタースポーツ離れが顕著で、かつてのスキーブームを知る世代からすれば、ゲレンデの賑わいは大きく様変わりしています。  このような状況を踏まえ、日本スキー場開発は「子ども向けプログラム」の充実に力を入れています。初心者に配慮した緩斜面の整備や、レッスンをしっかり受けられるスクールプログラムを用意することで、ファミリー層が子どもを連れて気軽に訪れやすい環境を作ろうとしているのです。  こうした地道な取り組みは、今すぐには大きな数字に結びつかないかもしれませんが、将来的にウィンタースポーツ人口を底上げする重要な施策です。全国的にスキー場の閉鎖や統廃合が相次ぐなか、勝ち残るためには“次世代の顧客”を育てることが欠かせません。日本スキーが積み上げているノウハウは、今後の国内スキー市場を下支えする一つのモデルケースになることが期待されます。
次のページ
なんだかんだ、スキー自体、昔と比べて厳しい経営状況
1
2
3
4
金融ライター、個人投資家。資産運用とアーティスト作品の収集がライフワーク。どちらも長期投資を前提に、成長していく過程を眺めるのがモットー。 米国株投資がメインなので、主に米国経済や米国企業の最新情報のお届けを心掛けています。Webメディアを中心に米国株にまつわる記事の執筆多数 X(旧ツイッター):@usjp_economist

記事一覧へ
おすすめ記事