更新日:2012年08月02日 09:06
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街中が馬だらけ!復活した南相馬の相馬野馬追祭

「甲冑に身を固めた五百余騎の騎馬武者が、野原を疾走する――」(公式パンフレットより)
相馬野馬追祭

町中を悠々と闊歩する甲冑馬。あちこちから馬の鳴き声と蹄の音、そして「落し物」が見られた

 東日本大震災の影響で昨年は規模を縮小して行われた、福島・南相馬の「相馬野馬追」本祭が7月29日に行われ、開催地の南相馬市原町地区には震災前より100頭あまり減ったが、400騎余りが集結、地区は久々の祭りに熱気を帯びた。  記者が南相馬市に到着したのは29日の早朝。街に入るなり、いきなり目に飛び込んできたのは車道に落ちていた大量の馬糞。コンビニエンスストア前のアスファルトにこんもりと盛られたそれを街の人は何事もなかったかのように通りすぎる。いったいこれから何が起こるのか……。  車で市内中心部に向かうと渋滞。よく見るとその先頭は馬、馬、馬……。悠然と歩く馬に続いて、乗用車が続くという光景があちらこちらで見られた。1000年もの歴史を持つこの祭りの前では車も従うしかないのだ。 ⇒【画像】はこちら https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=261806  午前9時半。花火を合図に街の中心部にある「雲雀ヶ原祭場地」へ甲冑を身につけた武士が行軍する。「侍諸侯に申し上げる!」総大将、軍師、郷大将、軍師など武士になりきった地元の男たちが口上を叫びながら、馬を操る。約3キロに渡る馬の行列は1時間にも及び、観客たちは猛暑のなか歓声を送った。  記者も沿道で見学したのだが、馬への距離が近い! 沿道の縁石に座った記者の顔をかすめるように通る甲冑馬。アスファルトの熱気で体から汗がしたたり落ちる馬たち。この馬たちは元競走馬がほとんどで、アスファルトの熱気は苦手らしく熱中症になった馬もいたそう。  しゃがんで見学する記者の顔面をかすめるように通る馬たち。くるっと尻を向けられて「落し物」をされるのではないかと気が気ではない。縁石から大きくはみ出して見学していたオジサンが馬にヒップアタックを食らうという「ハプニング」におののく観客。ここでは馬や武士に無礼があってはいけないのだ。 ⇒【画像】はこちら https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=261811  さらに驚いたのは祭りのメイン会場となる「雲雀ヶ原祭場地」。街の中心部にある「催事場」で、常設の「競馬場」だという。およそ1000mのダートコースが芝を囲み、背後の崖にはうず高く観客席が設えられている。芝生部だけでもサッカー場が4つは入ろうかという巨大さだ。聞けば、この広大な敷地は、年に1回、この祭りのためだけに使われるのだという。 ⇒【画像】はこちら https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=261814
相馬野馬追祭

これが常設の「競馬場」。祭りのためだけにあるとは驚きだ

 昼すぎ、約4万人の観客を飲み込んだ「祭場地」では甲冑競馬が始まった。2頭立て、4頭立て、8頭立てと回を追うごとに頭数が増えてくる。騎手には20代~30代の「イキのいい兄ちゃん」がほとんどだが、まだあどけない中学生くらいの少年もいる。地元の人によれば、地域の子供たちは祭りで馬に乗れるように、小さい頃から馬術の訓練を受けるのだという。いわば、この地域で、馬に乗れるのは、自転車に乗れるのと同じ感覚らしい。 ⇒【画像】はこちら https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=261818   競馬が終わると、空に打ち上げられ、舞い降りる旗を奪いあう「神旗争奪戦」。400騎の騎馬武者がもうもうと砂埃を上げて、旗を奪いあう姿はまさに合戦のようだ。旗を取った騎馬武者は観客席がある崖の坂を一気に駆け上がり、軍師より褒美をもらう。「旗を獲った、◯◯は45歳だから、放送して褒めてやってくれー」と地元の観客から、オヤジ侍を労うヤジが飛び、どっと観客席が沸いた。 ⇒【画像】はこちら https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=261820
相馬野馬追祭,神旗争奪戦

空から降ってくる旗を奪い合う騎馬兵たち。映画「ラストサムライ」のような光景だ

 祭りのあと、帰途につく観光客の車列で長い渋滞に。しかし、その先頭には白馬が。武士は馬に乗ってやってきて、馬に乗って帰る。アスファルトに響く蹄の音が、なんとも不思議な気分にさせる祭りであった。原発事故が収束し、来年は本来の規模で祭りが行われることを願ってやまない。 <取材・文・撮影/苫米地(本誌)>
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