振り込め詐欺[関西急増の真相]
これまで対策が功を奏し、減少傾向にあった振り込め詐欺被害に異変が起きている。8月9日の警視庁発表によれば、2012年上半期(1~6月)の振り込め詐欺など特殊詐欺事件の被害総額が、前年同期比でほぼ倍増の約153億5000万円に上ったのである。
しかも、注目すべきは関西エリアで急増している点だ。今でも関東地方の被害の割合は7割と多いものの、減少傾向にある。一方で、大阪をはじめとした関西圏では1%(11年上半期)から7.5%(12年下半期)に急増。被害額は前年同期比で76倍にもなる。
「大阪のおばちゃん」が財布のヒモを緩めるわけもなく、一体何が起きているのか?
「関西圏が増えた理由の1つは昨年末にトバシ携帯などを扱う関東の胴元道具屋が摘発を受け、関東で入手困難となった。そこで、関西・中部の道具屋が関東に進出し、交流が生まれたんです」(詐欺犯罪に詳しいジャーナリスト・鈴木大介氏)
関西圏の被害額が増えだしたのも、ちょうど今年の初めから。警察の被害データと符号する動きだ。
「振り込め詐欺対策の影響でトリ型優先(被害者宅まで金を取りに行くスタイル)しかできなくなったことで東京近郊でしか活動できなくなっていた振り込め詐欺グループにとって、大手の道具屋崩壊はトバシ携帯が手に入らないのみならず、『おかわりの効く名簿』(複数回詐欺に騙されたターゲットの名簿)など生命線を絶たれたに近かった。ところが、かつて『鬼門』=騙せないと言われていた関西、特に大阪地方に研修員を送ったところ、関西系の不良のアゴの強さ(トークの巧みさ)に驚いたと言います。研修員とは詐欺や悪徳訪販OBで、プロ中のプロ。そんな彼らが『関西はアツい』と確信した。さらに彼らが送られたのは関西のみではありません。今後は従来の都心事務所中心型の詐欺グループから一変し、現地に事務所を置いた地方での詐欺が確実に増えていく」(同)
振り込め詐欺対策がもたらしたものは、被害の地方分散。今後は各地でも対策が迫られるにちがいない。 <取材・文/日刊SPA!編集部>
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