障害者が殺人しまくり…度胆を抜かれる超超カルト映画
―[悶絶![トンデモ映画]ベスト42]―
世の中には一般的常識をはるかに超えた映画がある。超大作のはずがトホホな感じだったり、芸術的すぎて意味不明だったり、エログロすぎて正視できなかったり……。そんないろんな意味で“すごい映画”を8人の選者がセレクト。秋の夜長に、ぜひお試しあれ!
【古泉智浩】
’69年生まれ。漫画家。自主映画ワークショップ「よるのひるね映画研究会」主宰。映画化された『青春☆金属バット』『ライフ・イズ・デッド』のほか『転校生』など著書多数
◆古泉智浩「“人間、ここまで表現できるのか”と驚く映画が観たいですね」
本当に度肝を抜かれたのは『It is Fine! Everything is Fine』という映画。4年前にカナザワ映画祭で観たんですけど、童貞の脳性マヒのおじさんが主人公なんですよ。彼が女の人をデートに誘うんだけど冷たく断られる。そういう鬱憤が溜まってデートに誘った端から殺しちゃう。そのうちにSEXさせてくれてるのに殺しちゃったりして、最後、すごい親切にしてくれた可愛らしい女のコと、「白鳥の湖」が大音響でかかるなか、ハードコアなSEXをするんです。で、そのあとやっぱり殺しちゃう。
これは本当にトンデモない映画だなと思って。でも、実はその主役の脳性マヒのおじさん本人が脚本を書いているんです。しかも、撮影中に病状が悪化して死んでしまった。だから本当の意味で命がけで作られた映画だったんですね。
物語として度肝を抜かれたのは『私が、生きる肌』。ネタバレになるので詳しくは言えませんが、「えーっ、そうだったの!?」という。主人公の整形外科医が女の人を監禁しながら丁寧に面倒見てるんですけど、その裏に隠された真実がトンデモない。でも、みんなが真剣に生きててグッときます。
『ザ・レイド』という格闘アクションも、えげつなくて残酷ですごい。アメリカの映画館で観ていた黒人がドン引きしてたというから相当ですよ。インドネシアに伝わるシラッドという格闘術が基になってるんですけど、今後のアクション映画を変えると思います。
あとは、トンデモ映画としては定番ですが、『ピンク・フラミンゴ』。犬のウンコ食うとか聞いて、そんな気持ち悪いの絶対観たくないと思ってたんです。でも、ここ何年か、映画の基礎教養としてそういうものにも向き合っておかねばと思うようになって観てみたんですよ。そしたら、確かにキワモノなんだけど、映像からビリビリとすごい波動を感じて圧倒されました。
最後の『ロッキー3』は、トンデモなくつまらなかった作品。スタローン映画で観てないのを観ようと思ったんですが……。やっぱり「人間、ここまで表現できるのか」と驚く映画が観たいですね。
<古泉智浩氏が選んだトンデモ映画>
『It is Fine! Everything is Fine』(’07)
監督/クリスピン・グローヴァー、脚本・出演/スティーヴン・C・ステュアート。DVD未発売
『ザ・レイド』(’11)
監督/ギャレス・エヴァンス、出演/イコ・ウワイス、ジョー・タスリムほか。10/27より公開
『私が、生きる肌』(’11)
監督・脚本/ペドロ・アルモドバル、出演/アントニオ・バンデラス、エレナ・アナヤほか
『ピンク・フラミンゴ』(’72)
製作・監督・脚本・撮影/ジョン・ウォーターズ、出演/ディヴァインほか。DVDは現在廃盤
『ロッキー3』(’82)
監督・脚本・出演/シルべスター・スタローン、出演/タリア・シャイア、バート・ヤングほか
― 悶絶![トンデモ映画]ベスト42【6】 ―
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