園子温史上もっともヤバい映画はコレだ
―[悶絶![トンデモ映画]ベスト42]―
世の中には一般的常識をはるかに超えた映画がある。超大作のはずがトホホな感じだったり、芸術的すぎて意味不明だったり、エログロすぎて正視できなかったり……。そんないろんな意味で“すごい映画”を選者がセレクト。秋の夜長に、ぜひお試しあれ!
【三留まゆみ】
東京都生まれ。映画の見どころを細かく描き込む手法で知られる映画イラストライター。著書『三留まゆみの映画缶』『ブライアン・デ・パルマWorld is yours』(監修)など
◆『ショーガール』のえげつないエログロは体力のあるとき限定で
どうしたらこんなにひどくできるのか、と思うのが『デビルマン』。“学芸会レベル”と評された主役2人の演技もさることながら、何より脚本がダメ。そもそも原作では主人公は覚悟をもってデーモンと合体し、そこが大きなテーマでもあるのに、映画じゃ「オレ、デーモンになっちゃったよ」って、うっかり感丸出し。それはないだろうと。人物がまるで描けてないし、壮大な世界観が半径500mの話になっちゃってる。すべてが上滑りなんですよ。誰も原作に愛を持っていない。ってか、原作を知らなかったんじゃないか。ファンとしては「オレたちのデビルマンを返せ!」と言いたい。
ほとんど我慢大会なのが園子温監督の『部屋 THE ROOM』。固定カメラで工場らしきものが4~5分間映ってるだけのオープニングは「もしやこのまま終わるのでは?」との不安を感じさせます。登場人物は終始無表情だし、その後もケンカを売ってるような長回しが延々と続くし、見続けるには覚悟が必要。それでも最後まで観るのか、ここで降りるか。まるで監督とガチンコ勝負してるかのような作品です。
反対に『アタック・オブ・ザ・キラートマト』は、トマトが人間を襲うだけの話で単純明快。ただ、そのチープさがハンパじゃないんです。トマトが飛んできて襲うシーンは明らかに誰かが投げてるわ、巨大化した殺人トマトの下には台車が見えてるわと、特撮とも呼べないほどで(笑)。そこを笑えるかどうかでしょうね。
いわゆるホラーじゃないけど怖いのが『ショーガール』。ショービズの世界でトップに立つために争う女たちのドロドロ&エログロぶりがえげつない。悪趣味博覧会というか、全員ビッチで誰にも感情移入できないし。アメリカに対するポール・ヴァーホーヴェン監督の悪意満載の映画。おっぱいやお尻はたくさん出てくるけど、これでもかと見せつけられると、うれしいよりも「もう結構」ってなると思う。見応えはありますが、体力のあるとき限定ってところかな。
エログロでは『DEAD OR ALIVE 犯罪者』もかなりのものですが、えげつないけど面白いし、最後まで一気に見せる。生理的に「ウッ」となるシーンは多いけど、見続ければ映画史に残るトンデモないエンディングが待ってます。たとえ思いついても誰もやらないこと=中坊の妄想を堂々と映像化しちゃったのが素敵。好き嫌いは別にして、今まで知らなかった映画体験ができるのは間違いないと思いますね。
<三留まゆみ氏が選んだトンデモ映画>
『部屋 THE ROOM』(’93)
監督・脚本/園子温、出演/麿赤兒、洞口依子、佐野史郎、高橋佐代子ほか。DVDは現在廃盤
『アタック・オブ・ザ・キラートマト』(’78)
監督/ジョン・デ・ベロ、出演/デヴィッド・ミラー、シャロン・テイラーほか。DVDは現在廃盤
『デビルマン』(’04)
監督/那須博之、脚本/那須真知子、出演/伊崎央登、伊崎右典、酒井彩名、渋谷飛鳥、冨永愛ほか
『ショーガール』(’95)
監督/ポール・ヴァーホーヴェン、出演/エリザベス・バークレイほか。DVDは現在廃盤
『DEAD OR ALIVE 犯罪者』(’99)
監督/三池崇史、出演/哀川翔、竹内力、石橋蓮司、小沢仁志、鶴見辰吾、杉田かおるほか
― 悶絶![トンデモ映画]ベスト42【4】 ―
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