週刊新潮「中国人9割は『日本と戦争』」の偏向報道
中国人9割は「日本戦争」「東京空爆」――『週刊新潮』2/21号の特集は過激だった。中国共産党の機関紙『人民日報』傘下の大衆紙『環球時報』が3万人の中国人を対象に実施したアンケート調査を引用し、その9割近くが「日本は開戦への第一弾を発泡するだろう」と答えたことを報じたのだ。
※【グラフ】アンケート結果はコチラ⇒https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=393194
「日本と戦争するべきか?」の問いに「わからない」と回答した人も4人いたが、この分を差し引くと実に82%の人が「日本と戦争するべきでない」と回答したことになる。もちろん、アンケートを実施するに当たり、日本と公私両面で繋がりのある中国人を介したために親日家に偏りがちだった可能性はある。だが、少なくとも環球時報が報じ、週刊新潮が引用した「9割」にも相当なバイアスがかかっていることがわかるはずだ。
SPA!のアンケートで「日本と戦争するべきでない」と回答した中国人はいたって冷静に日中関係を見ている。
「政治ゲームの支払いをさせられるのは一般市民」(上海在住・20代男性・不動産)
「経済的に見れば、中国は世界第2位。日本は第3位の経済大国。これに日本の軍事保護国である世界1位の米国を合わせて考えると、もし戦争になった場合、現時点で先行き不透明な政界経済に巨大なダメージとなる(中略)もし中国が武力行使すれば国際社会で侵略者のレッテルを張られ、東南アジア諸国はますます中国への警戒を強めるだろう」(北京在住・20代男性・法律関係)
「中国共産党は“内戦”のプロ。外国と戦うのは素人。今の政府・軍の汚職は深刻で、戦える兵はいない」(広州在住・30代男性・IT関連)
「現在は数世代にわたる人々の血と命によって手に入れた平和的な生活だ。無辜の民衆の努力と未来は政治家のゲームと出世のいけにえにするべきではない」(成都在住・20代女性・メディア関連)
「戦争すべきでない」理由がこのように多岐にわたる一方で、「戦争すべき」と答えた中国人の理由は「口げんかでは意味がない」(武漢在住・20代男性・学生)、「チンピラには殴ってわからせるしかないから」(シンセン在住・20代男性・職業不明)、「(1)日本民族の性質は殴らないと言うことをきかない。(2)戦争は両国の経済を発展させる。(3)民族の恨みをはらすことができる」(太原在住・20代男性・法律関係)と、感情的な意見が目立つ。
⇒【表】アンケートの回答より一部抜粋 https://nikkan-spa.jp/392220
なお、「日中関係を改善させるために必要なことは?」の問いには、7人が“棚上げ論”を主張する一方で、10人が「中国共産党の腐敗を正すこと」と回答。丁寧に「中国の反日教育と抗日メディアが煽った影響は大きい」と添える回答者もいた。中国メディアでは明らかにされない真実の一端が見える内容といえるだろう。 <文/日刊SPA!取材班>
確かに中国紙は“日中開戦”ムード満々の煽り方をしている。1月には人民解放軍の機関紙『解放軍報』が、習近平総書記が「戦争の準備をせよ」と軍部に号令をかけたことを報じた。環球時報は「中国人民は中日開戦の準備ができている」と報じ、テレビやネット番組では人民解放軍少将や中国海軍幹部を名乗る人物が「日本が1発撃ったら中国は直ちに反撃して2発目を撃たせないだろう」などと過激な発言を繰り返しているのだ。
だが、これは中国人の総意を反映しているものとは言い難い……。「中国人はそんなに日本と戦争としたがっているのか?」。そんな疑問を抱いて、SPA!が実施したアンケートでは、中国紙の報道と真逆の結果が明らかになったのだ。
残念ながら環球時報と異なり、母数はかなり小さい。中国在住ライター等を通じて、10~30代の中国人67人にアンケートに回答してもらった。回答者の所在地は、北京、上海など大都市が約30%を占めているが、そのほかはハルピン、西安などさまざまだ。職業も、IT・ネット関連から不動産、金融、政府系機関、学生などバラバラ。そんな67人のうち「日本と戦争するべき」と答えたのは、7人。全体の10%に過ぎなかった。
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