嫌いな人とストレスなく付き合う方法
著述家で編集者の石黒謙吾氏による新著『7つの動詞で自分を動かす』(実業之日本社)が注目されている。「愚直に動くこと それは誰だってできる簡単な問題解決法」と謳う同書では、「ぶつける」「分ける」「開ける」「転ぶ」「結ぶ」「離す」「笑う」という7つの動詞を提示。それらを入り口に、「<名詞で受動的に考える>から、<動詞で能動的に考える>」ことの重要性が解説されている。
著者の石黒氏に聞く「サラリーマンの日常を“7つの動詞”で見直すと……?」というテーマの6つ目は「離す」。タフな仕事人として名高い石黒氏の熱いメッセージを見逃すな!
◆その6「離す」
――7つの動詞の中で「離す」は、「転ぶ」(https://nikkan-spa.jp/395929)と並んでネガティブなニュアンスを持つ言葉ですね。この2つ以外はポジティブな印象なのに。
石黒:ええ、わりと意識してネガティブにも取れる動詞を含めました。人間は「陰と陽」を合わせ持っているものですから。ネガティブに寄ってしまうのはもちろん避けたいことですが、かといってポジティブ一辺倒でも不自然でしょう。考えた方に無理がある。大事なのはバランス。そもそも、人間ってそんなに前ばかり向いていられるほど単純じゃありませんしね。
とくにビジネスにおいて考えたい「離す」の肝は、「冷静さ」でしょう。前向きでイケイケな状況にあっても、ある意味、自分自身を突き放すような、俯瞰するような視点をときどき持ち込む意識はとても重要です。離すとは、熱さの中にあるクールさのようなもの。たとえば、上司や同僚と意見が食い違って、論争になってしまうこともある。そこで感情的になってしまったり、論破することありきで強弁を振り回してしまうのではなく、そうした激情を意識の外に置いてみるというか、あえて第三者的に見てみる。カメラをグーッとズームアウトするような感覚です。もしくは、神の視点で天から見下ろす。
無意識にやっている人もいるのですが、これを意識的にやるようにする。能動的に、自分を第三者目線で見てみようと。
「離す」ってネガティブな感じもしますが、これはつまり「執着」とウラハラなものなんです。「離す」ことを意識しないと、重い生き方になりそう。たとえば、本当は家族が大切なのに、出世に固執してそれを自分にいちばん近いところにおいてしまったばかりに、家族のことを蔑ろにしてしまうとか。ならば意識して「出世」との距離を、家族との距離より遠くに離さないといけない。また、同僚からの信頼が薄れているかも……なんて雰囲気を感じ取れるかどうかも、「離す」を意識しているかどうかが関わってくるでしょうね。
――「離す」を意識する重要性はわかったのですが、離したくも離せないことって、サラリーマンの日常には少なくありませんよね。同じ部署のイヤな同僚とか、話の通じない上司とも付き合っていかなければいけませんし……。
石黒:ここで大切になるのが俯瞰する視点です。第三者目線でとらえると「コイツにいちいち腹を立てている私はバカみたいだな」と思えることはたくさんあるはず。当事者感覚が強すぎると、精神的にソンすると考えます。冷静になれば「イヤな人のことに執着してる脳と心がもったない、アホらしい」となれますよ。
僕はせっかちなので(笑)、瞬間的にイライラすることは多々ありますが、すぐ気にしなくなる。というか、すぐ忘れてしまうクセを長年自分で付けてきました。けっこう意識してきましたよ。
――そんなこと、できるんですか?
石黒:できますよ! 何事でもそうですが「そんなの無理」とか言う人は、ずっとできないまま。一方、「今日からやってみよう」と少しずつでも心がけることができる人は、ジワジワでも、できるようになります。
嫌いな人を好きになるのは、なかなか難しい。だったら、その人のことを嫌いではなく「普通の人」と思えばいいだけのこと。“好き・普通・嫌い”という感情の違いがあるとしたら、「好きな人/嫌いな人」ではなく「好きな人/それ以外の人」という二択にする。
僕の場合だと、「嫌い」という感情が自分の中に湧いてきたら、意識の外に置くようにしています。能動的に「離す」ことを意識して感情をコントロールしているんです。「気にしない」ことは、トレーニングすればできるようになると思いますよ。そうすれば、嫌いな人の顔を見るたびに「うわぁ……」と気持ちが萎えてくる、なんてこともなくなります。
【石黒謙吾氏】
編集者・著述家・分類王。1961年、石川県金沢市生まれ。講談社『PENTHOUSE』、『Hot Dog PRESS』の雑誌記者・編集者を経て、32歳で完全フリーに。以来、書籍の編集やプロデュースに注力し、これまでに200冊以上を手がける。著書は87万部で映画化もされた『盲導犬クイールの一生』はじめ、『2択思考』『図解でユカイ』『ダジャレ ヌーヴォー』など多数。プロデューサー・編集者としても、歴史・社会ネタからサブカルまで、硬軟織り交ぜたさまざまな本作りを展開する。全国キャンディーズ連盟(全キャン連)代表。日本ビアジャーナリスト協会副会長。草野球歴34年、年間40試合という現役プレーヤーでもある。
<取材・文/漆原直行>
― 7つの動詞でサラリーマンは変われる!【6】 ―
『7つの動詞で自分を動かす - 言い訳しない人生の思考法』 人生を心地よく、ストレスフリーに生きるヒント |
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