原発への派遣条件に唖然 「35歳以上で、子供をつくる予定のない人」
「子や孫を被曝から守りたい」と、「福島原発行動隊」(シニア決死隊)の有志が動き出した。“本丸”である福島原発での作業を待ちわびながら、除染につながる草刈り作業に汗を流したシニアたちの素顔に迫る。
◆若者が犠牲になる構図はまるで特攻隊
横山滋さん(67歳)も「孫2人(2歳と7か月の女の子)の世代に対して責任がある」という思いから参加。これまで神奈川県内の工業高校の教員をしていた。
「卒業生の多くが石川島播磨重工業、三菱重工、横須賀の核燃料加工工場などで働いている。僕がビックリしたのは、原発への派遣条件の中に『35歳以上で、子供をつくる予定のない人』とあること。何でかって聞いたら、放射線による人体への影響らしいんですよ」
ボランティア企画者のひとり、平井秀和さん(67歳)は、原発事故収束のために働く若い作業員のことを見聞きするたび、「胸を刺す痛みに苦悩していた」という。
「放射線の影響を受けやすい若者たちが、どうして犠牲にならないといけないのでしょうか。まるで特攻隊の構図を見ているようだ」
行動隊の存在は、mixi仲間から5月中旬に知った。平井さんは、3人の子供たちを集めて“志願”への思いを打ち明けた。
「『孫が年ごろになったら、このことを伝えるよ。お父さんのことを誇りに思う』って言ってくれました。原発の電力を享受してきたのは我々の世代。若い世代には何の責任もありません。残りの人生、日本の未来のために尽くしたい」
平井さんには配管工の経験もある。27歳のとき仲間と、静岡・焼津の水産物を直接買い付けて魚屋に販売を始めた産直の元祖。その後独立し、八王子魚市場内に店を出す。大型店の台頭を前に店をたたみ、保険代理業を始めて今に至る。「行き当たりばったりの人生だからね。放射線に鈍感な年寄りの出番ですよ」と笑い飛ばした。
【平井秀和さん】
「同世代に話してるんだよ。『明日死んでも俺、後悔ないよ』って。全力で走っているから」。早大卒、ラグビー歴50年。地元のジュニアクラブを指導、女子ラグビーの試合観戦も欠かさない
― シニア決死隊の決意「オレたちが悲劇を終わらせる!」【4】 ―
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