更新日:2014年04月18日 09:12
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赤字経営なのに…中国の“無駄な”空港開発ラッシュがピーク

 空港開発ラッシュがピークを迎えている。民用航空総局によると、’12年に183か所だった空港は、’15年までに220を超える見込みだという。年内には北京新空港の着工も開始し、完成すれば年間乗降客数1億3000万人という世界最大のハブ空港となる予定だ。一方チベットでも、世界一標高の高い空港の建設計画も進んでおり、上海の浦東国際空港でも年内に第4滑走路が完成するなど、新空港・既存空港の拡張が進む。  しかし、利便性を度外視した「乱開発」とも言える事例も。深セン市の不動産会社勤務・岡本宏大さん(仮名・27歳)は、空港開発は「縦割り行政の骨頂」と話す。
上海,空港

※イメージです

「昨年末、深セン空港のターミナルが新設されたんですが、旧ターミナルからは数キロも離れていて、事実上、全く別の空港。閉鎖されることとなった旧ターミナルには、昨年やっと地下鉄が乗り入れたんですが、それも無駄になってしまった。噂によると、空港開発と地下鉄開発を所管するそれぞれの部門のトップが権力闘争を繰り広げて、こうなったらしい(苦笑)」  空港乱開発の一方で、空港経営の赤字問題も。民用航空総局によれば、黒字経営できているのは北京、上海、広州、深センなど大都市の空港のみ。全国の空港の約7割は赤字で、その総額は年間約250億円にものぼるという。  新ターミナルが完成したばかりの湖南省・長沙空港もそのひとつ。広州市在住の日系工場勤務・戸田誠さん(仮名・45歳)の話。 「2年前に高速鉄道で北京まで直通で行けるようになってから、長沙空港が廃れた。今ではタクシーも行きたがらないので、街からは相場の1.5倍の料金を払って白タクを捕まえるしかない。滑走路も老朽化が激しく、ひび割れがひどく、ビクビクですよ」  こうしたなか、赤字空港や空港を管轄する地方政府は損失補填に躍起だ。『中国新聞社』によると、省内9つの空港のうち7つが赤字という江蘇省では、昨年、地元政府が行政部門に文書で「チャーター機を利用し、海外への出張・視察をせよ」と指示したという。  仏山市で貿易業を営む林田岳男さん(仮名・49歳)も、本業以外での赤字補填に精を出す空港に出くわした。 「広西チワン族自治区にある南寧空港では、何故かチェックインカウンターの前に手荷物検査があって、出発90分前にならなければ検査場を通ることができない。検査場の前には座る場所もない。仕方なく唯一ある喫茶店に入ったのですが、なんとコーヒー1杯が1200円! マズいのに日本より高いんです。チェックイン前に実施される手荷物検査も、その喫茶店でお金を使わせる算段だったとしか思えません……」  しかし、多くが赤字に苦しむなか、なぜ新たな空港が次々に建設されるのか。中国事情に詳しいジャーナリストの富坂聰氏は話す。 「地方発展という大義のもとでの空港建設は、カネ集めのための公共事業としては最後の切り札。号令さえかければデベロッパーがカネを持って寄ってくるわけですから。経済が鈍化し地方財政が逼迫するなか、採算度外視でも自転車操業的に造り続けるしかない」  中国経済がソフトランディングできる場所はもはやない!? <取材・文/奥窪優木> 週刊SPA!連載 【中華人民毒報】 行くのはコワいけど覗き見したい――驚愕情報を現地から即出し
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

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