世界的ラリーで占う 来年の投資先はどこがよいか?(4)
来年以降、プーチン新大統領の下、ロシアはどう動くか。ロシアは、サウジアラビアをしのぐ最大産油国である。ロシアとしては「石油頼り」を脱却するために、スコルコボ計画など着手しているが、国の経済を支えるようには新産業はまだ発達していない。
私の見立てはこうだ。来年前半、今は平穏なサウジアラビアで暴動が起こる。ロシアが後ろで糸を引いて暴動を起こすとまでは言っていないが、疑っている。知り合いの武器商人が言うには、サウジ政府は、現在、武器を積極的に購入しているが、それは「戦争」で使うような武器ではなく、「内戦」で使われるような火器類だという。つまり、サウジ政府も警戒しているということだ。
もしサウジに暴動が起こると、当然、石油価格は急騰する。世界最大産油国の一つであるサウジの産油量が減れば、現在1バーレル80ドル前後のWTIの値段で言えば、今年春の高値の110ドルを超え、150ドル界隈まで上昇することも考えられる。
そういう場合、何を買うと儲かるのか。
原油のETFを購入するというのも一つの手だ。しかし、実は、ETFはあまり儲からない。たとえば、金の価格が上昇するときに儲かるのは、金そのものよりは、金を生産する会社の株だ。数倍のレバレッジがかかる計算になる。また、あくまでも株の購入だから、先物でレバレッジをかけるのとは違って、マイナスになったりしないという意味で安全だ。つまり、原油株を購入するのが一番儲かる。
では、どこの株か? お勧めは、ロンドン上場のガスプロムだ。流動性があるので、売りたいときに売れる。また、為替的にも安心だ。たとえば、円投資家にとっては、WTIはドル投資だ。原油価格とドル円相場の両方が影響する。ドルは読めない。どちらかに賭けろといわれれば、1年先なら円安・ドル高ではあるが、読みきれないところだ。
ロンドン上場のガスプロムもドル建てだが、それは表面であって実態はロシア・ルーブル連動だ。資源通貨であるルーブルのほうがドルよりも強いように思える。
ただ、一般の投資家には、ロンドン上場のガスプロムの株式を購入するというのも面倒かもしれない。そういう人には、ロシアの資源株にも資金配分しているロシア株式投信、あるいは、ロシア株の配分が多いBRICS投信がお勧めだ。
原油価格的にも、今は押し目。少額で投資をして、世界事情へのアンテナを張り巡らせてみてはいかがか。
取材・文/石井至
【筆者プロフィール】
石井至(いしい いたる) 1965年北海道生まれ。東大医学部卒。米・スイス・フランスの外資系銀行でデリバティブ商品開発に従事。28歳でマネージング・ディレクター就任は日本人最年少記録。32歳に引退後、独立。現在は石井兄弟社代表取締役社長。金融コンサルタンティングを軸に、金融・教育分野で事業展開し、運営する小学校受験塾「アンテナ・プレスクール」は名門校への高合格率を誇る。
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