倉山満「今こそ憎むべき強敵ロシアから『悪の論理』を学べ」
アメリカ、中国、韓国と、日本に縁深き国を新書「嘘だらけシリーズ」で次々とブッタ斬ってきた憲政史研究者の倉山満氏。最新作となる第4弾では、ルーブル危機やウクライナ問題に揺れるロシアを標的にすえた。なぜ今、ロシアなのか。「日本は憎むべき強敵から、悪の論理を学ぶべき」と語る倉山氏に、理由を訊ねた。
※前回の記事『プーチン幻想なんてさっさと捨てろ!』
https://nikkan-spa.jp/805256 ――米・中・韓と、ロシアが異なる点をまず教えてください。 「米中韓は本質的にバカです。しかし、ロシアは本質的にワル。この違いは大きい。米中韓の三バカは理由の違いこそあれ、『文明』を理解できない可哀想な連中です。この場合の『文明』とは国際常識と言い換え可能ですが、アメリカや中国は、何かの間違いで力を手に入れてしまったバカ、韓国は力も手に入れられないバカだとすれば、ロシアはクレバー(利口)かつスニーキー(卑劣)な国です。『文明』を理解したうえで破る。破るために熟知していると言ってもいい。『嘘だらけシリーズ』において初の、憎むべき強敵の登場といったところでしょうか」 ――ロシアが持つしたたかさの根本にあるものは何でしょうか。 「非常に臆病だということです。ロシアはよく『500パーセントの安全保障を求める国』と言われるのですが、根源にあるものは『滅びたくない』『生き残りたい』という強烈な本能です。これが国家を動かす原理になっている。日本が見習うべきものは、彼らのサバイバル術です。ロシアは人間の命が恐ろしく軽い代わりに、国家としての生存本能がとてつもなく強い。逆に日本の場合は、人間の命を大事にする一方で、国家の命は永遠に続くものだと勘違いしている。日本人にとって、日本という国は生存していて当たり前で、まさかなくなるものだとは思っていない。一度、敗戦によって地球の地図上から消されているにもかかわらず、国家の命をありがたいと思っていないんですよ」 ――なぜロシアは大国なのに、「生き残りたい」という思いが強いのでしょうか? 「歴史的に見れば、ロシアは長らく小国だったからです。『タタールのくびき』といってモンゴル人にずっとパシリ扱いされていましたし、ポーランドにモスクワを焼かれたり、スウェーデンには中心都市ノヴゴルドを占領されたりしています。大国になったのは、ようやく17世紀の後半でピョートル大帝の頃です。日本にたとえるなら、東京が焼け野原になり、大阪を奪われるような目に何度も何度も遭いながら、それでもヘコたれずに這い上がってきた執念と根性があるわけです」 ――小国だったときの記憶がロシアを強くしていったと? 「少なくとも今回の新刊『嘘だらけの日露近現代史』で取り上げたロシアの法則は、すべて『滅びたくない』『生き残りたい』という強い欲求から生まれています。すなわち、 (1)何があっても外交で生き残る (2)とにかく自分を強く大きく見せる (3)絶対に(大国相手の)二正面作戦はしない (4)戦争の財源はどうにかしてひねりだす (5)弱いヤツはつぶす (6)受けた恩は必ず仇で返す (7)約束を破ったときこそ自己正当化する (8)どうにもならなくなったらキレイごとでごまかす の8つです。ヨーロッパの国々がアジアに優越していくのは18世紀ですが、ロシアは1803年にはじまったナポレオン戦争に勝って超大国となり、それから130年後、ソ連は第二次世界大戦後には地球の半分を支配する強大な国になっています。その躍進の原動力こそがこの8つのサバイバル術であり、それを徹底する強さがあります」 ――何となく「ロシア=謀略や暗殺」みたいなイメージもありますが? 「それも伝統の一つです。遡れば16世紀、雷帝イヴァン四世が創設した皇帝直属秘密警察オプリチニキは、富裕貴族を暗殺することで彼らの所領を奪っていきました。ロシアは、宗教的な権威と政治的な権力が分離していないため、力が1人のもとに集まりやすいのです。ちなみにオプリチニキも、もとを辿れば東ローマやモンゴルの秘密警察の伝統を受け継いでいます」 ――米・中・韓に比べて、ロシアの歴史は複雑な感じがします。 「そのとおりです。ロシアは良くも悪くも大人の国ですから、一言でわかりやすい結論など出せません。『北方領土を火事場泥棒したソ連は悪い国だ』と言えば、間違いではありませんが、そんな『悪い国』を相手に日本はどう付き合って何を交渉すべきなのか、考えねばなりません。『日本はレーニンの親衛隊コミンテルンの陰謀にはまって戦争に負けた』ことは確かでも、その実、コミンテルンがやったことはよくわかっていない。そこで思考を停止しては意味がなく、研究し彼らの手口に学ばねばなりません。世界的には、アメリカのようなわかりやすい国のほうが、与し易いとも言えます。米ソの冷戦を例に見ても、地政学のリアリズムに則って動いていたのはソ連であり、アメリカは仮想敵を公言するような間抜けな無知をさらけだしています。そして、最後まで国際常識がわからず十字軍のような思い込みが抜けませんでした」 ――日本人の多くは、ロシアが持つ難解さから逃げてきた、と言えるのでしょうか? 「韓国を叩いているほうがラクですからね。自分より愚かな連中を見て喜べますから。そういう意味で、新刊は『嘘だらけシリーズ』のなかでもっとも教養書らしい一冊です。前3作よりも、ワンランクアップした内容になっていますので、ぜひ多くの人に読んでもらいたいです」 誤解にまみれた各国の正体を通史で解き明かす、倉山満氏のベストセラー「嘘だらけシリーズ」。これまでにアメリカ、中国、韓国を扱ってきたが、新刊『嘘だらけの日露近現代史』では、近くて遠い国・ロシアの成立から現在に至るまでを徹底分析している。「米中韓は『文明』を理解できない国でしたが、ロシアは『文明』を理解したうえで破る国です!」だと喝破する倉山節が、あなたのロシア観を覆す! <取材・文/ツクイヨシヒサ> 【講演会&サイン会開催】 『嘘だらけの日露近現代史』刊行記念「倉山満氏 講演会 ~ロシアを知れば世界がわかる~」開催決定! 日時/2015年3月16日 (月) 18時30分~(開場:18時00分) 会場/八重洲ブックセンター本店 8F ギャラリー 参加費/無料 募集人員/100名(申し込み先着順) ※定員になり次第、締め切らせていただきます。 申込方法/申込書に必要事項をご記入の上、1階サービスカウンターにてお申し込みください。申込書は同カウンターにご用意してございます。また、お電話によるお申込も承ります(電話番号:03-3281-8201)。※講演会終了後、会場にて書籍をご購入いただいたお客様を対象にサイン会を実施いたします(お持ち込みの本・色紙・グッズ等へのサインはできません) 【倉山満氏】 憲政史研究者。著者シリーズ累計27万部を突破したベストセラー『嘘だらけの日米近現代史』『嘘だらけの日中近現代史』『嘘だらけの日韓近現代史』に続く、「保守入門シリーズ」『保守の心得』、『帝国憲法の真実』を発売。待望の新刊『嘘だらけの日露近現代史』を2月28日に発売。
https://nikkan-spa.jp/805256 ――米・中・韓と、ロシアが異なる点をまず教えてください。 「米中韓は本質的にバカです。しかし、ロシアは本質的にワル。この違いは大きい。米中韓の三バカは理由の違いこそあれ、『文明』を理解できない可哀想な連中です。この場合の『文明』とは国際常識と言い換え可能ですが、アメリカや中国は、何かの間違いで力を手に入れてしまったバカ、韓国は力も手に入れられないバカだとすれば、ロシアはクレバー(利口)かつスニーキー(卑劣)な国です。『文明』を理解したうえで破る。破るために熟知していると言ってもいい。『嘘だらけシリーズ』において初の、憎むべき強敵の登場といったところでしょうか」 ――ロシアが持つしたたかさの根本にあるものは何でしょうか。 「非常に臆病だということです。ロシアはよく『500パーセントの安全保障を求める国』と言われるのですが、根源にあるものは『滅びたくない』『生き残りたい』という強烈な本能です。これが国家を動かす原理になっている。日本が見習うべきものは、彼らのサバイバル術です。ロシアは人間の命が恐ろしく軽い代わりに、国家としての生存本能がとてつもなく強い。逆に日本の場合は、人間の命を大事にする一方で、国家の命は永遠に続くものだと勘違いしている。日本人にとって、日本という国は生存していて当たり前で、まさかなくなるものだとは思っていない。一度、敗戦によって地球の地図上から消されているにもかかわらず、国家の命をありがたいと思っていないんですよ」 ――なぜロシアは大国なのに、「生き残りたい」という思いが強いのでしょうか? 「歴史的に見れば、ロシアは長らく小国だったからです。『タタールのくびき』といってモンゴル人にずっとパシリ扱いされていましたし、ポーランドにモスクワを焼かれたり、スウェーデンには中心都市ノヴゴルドを占領されたりしています。大国になったのは、ようやく17世紀の後半でピョートル大帝の頃です。日本にたとえるなら、東京が焼け野原になり、大阪を奪われるような目に何度も何度も遭いながら、それでもヘコたれずに這い上がってきた執念と根性があるわけです」 ――小国だったときの記憶がロシアを強くしていったと? 「少なくとも今回の新刊『嘘だらけの日露近現代史』で取り上げたロシアの法則は、すべて『滅びたくない』『生き残りたい』という強い欲求から生まれています。すなわち、 (1)何があっても外交で生き残る (2)とにかく自分を強く大きく見せる (3)絶対に(大国相手の)二正面作戦はしない (4)戦争の財源はどうにかしてひねりだす (5)弱いヤツはつぶす (6)受けた恩は必ず仇で返す (7)約束を破ったときこそ自己正当化する (8)どうにもならなくなったらキレイごとでごまかす の8つです。ヨーロッパの国々がアジアに優越していくのは18世紀ですが、ロシアは1803年にはじまったナポレオン戦争に勝って超大国となり、それから130年後、ソ連は第二次世界大戦後には地球の半分を支配する強大な国になっています。その躍進の原動力こそがこの8つのサバイバル術であり、それを徹底する強さがあります」 ――何となく「ロシア=謀略や暗殺」みたいなイメージもありますが? 「それも伝統の一つです。遡れば16世紀、雷帝イヴァン四世が創設した皇帝直属秘密警察オプリチニキは、富裕貴族を暗殺することで彼らの所領を奪っていきました。ロシアは、宗教的な権威と政治的な権力が分離していないため、力が1人のもとに集まりやすいのです。ちなみにオプリチニキも、もとを辿れば東ローマやモンゴルの秘密警察の伝統を受け継いでいます」 ――米・中・韓に比べて、ロシアの歴史は複雑な感じがします。 「そのとおりです。ロシアは良くも悪くも大人の国ですから、一言でわかりやすい結論など出せません。『北方領土を火事場泥棒したソ連は悪い国だ』と言えば、間違いではありませんが、そんな『悪い国』を相手に日本はどう付き合って何を交渉すべきなのか、考えねばなりません。『日本はレーニンの親衛隊コミンテルンの陰謀にはまって戦争に負けた』ことは確かでも、その実、コミンテルンがやったことはよくわかっていない。そこで思考を停止しては意味がなく、研究し彼らの手口に学ばねばなりません。世界的には、アメリカのようなわかりやすい国のほうが、与し易いとも言えます。米ソの冷戦を例に見ても、地政学のリアリズムに則って動いていたのはソ連であり、アメリカは仮想敵を公言するような間抜けな無知をさらけだしています。そして、最後まで国際常識がわからず十字軍のような思い込みが抜けませんでした」 ――日本人の多くは、ロシアが持つ難解さから逃げてきた、と言えるのでしょうか? 「韓国を叩いているほうがラクですからね。自分より愚かな連中を見て喜べますから。そういう意味で、新刊は『嘘だらけシリーズ』のなかでもっとも教養書らしい一冊です。前3作よりも、ワンランクアップした内容になっていますので、ぜひ多くの人に読んでもらいたいです」 誤解にまみれた各国の正体を通史で解き明かす、倉山満氏のベストセラー「嘘だらけシリーズ」。これまでにアメリカ、中国、韓国を扱ってきたが、新刊『嘘だらけの日露近現代史』では、近くて遠い国・ロシアの成立から現在に至るまでを徹底分析している。「米中韓は『文明』を理解できない国でしたが、ロシアは『文明』を理解したうえで破る国です!」だと喝破する倉山節が、あなたのロシア観を覆す! <取材・文/ツクイヨシヒサ> 【講演会&サイン会開催】 『嘘だらけの日露近現代史』刊行記念「倉山満氏 講演会 ~ロシアを知れば世界がわかる~」開催決定! 日時/2015年3月16日 (月) 18時30分~(開場:18時00分) 会場/八重洲ブックセンター本店 8F ギャラリー 参加費/無料 募集人員/100名(申し込み先着順) ※定員になり次第、締め切らせていただきます。 申込方法/申込書に必要事項をご記入の上、1階サービスカウンターにてお申し込みください。申込書は同カウンターにご用意してございます。また、お電話によるお申込も承ります(電話番号:03-3281-8201)。※講演会終了後、会場にて書籍をご購入いただいたお客様を対象にサイン会を実施いたします(お持ち込みの本・色紙・グッズ等へのサインはできません) 【倉山満氏】 憲政史研究者。著者シリーズ累計27万部を突破したベストセラー『嘘だらけの日米近現代史』『嘘だらけの日中近現代史』『嘘だらけの日韓近現代史』に続く、「保守入門シリーズ」『保守の心得』、『帝国憲法の真実』を発売。待望の新刊『嘘だらけの日露近現代史』を2月28日に発売。
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