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あなたの天皇観はまちがっている!? 倉山満が「5つの誤解」を解く

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1973年、香川県生まれ。憲政史家 撮影/林紘輝

 新刊『日本一やさしい天皇の講座』にて、皇室と日本人の関係を通史で書き上げた倉山満氏。譲位、女系、女帝、旧皇族の皇籍復帰など、皇室を巡る論点は尽きないが、氏に言わせれば「その前提となる部分に、国民のカン違いが多い」という。皇室に対する「よくある誤解」として、以下の5つを挙げてもらった。

【誤解1】天皇陛下が退位を希望するのは、公務に「疲れた」から!?

倉山満(以下、倉山):とんでもない誤解です。平成28年8月8日のいわゆる「生前退位に関するビデオメッセージ」において、天皇陛下はひと言も「俺は疲れた、休みたい」などとは仰っていません。自分は死ぬほど働けと言われたら働くが、制度としてこの状態はどうなのか、今後もずっと続けられるかどうかを考えてほしい、と訴えられたのです。 ──「続けられる」というのは、何をですか? 倉山:伝統としての象徴天皇を、です。日本国憲法に「天皇は、日本国の象徴であり……」と記されているせいで、誤ったイメージが広まっているのかもしれませんが、じつは歴代天皇のなかで「象徴ではなかった」天皇というのは、数えるほどしかいません。平安時代の嵯峨天皇以降で考えれば、基本的にすべて象徴天皇です。実力を伴う独裁者の地位を目指したのは、鎌倉幕府を倒した後醍醐天皇ただひとり。明治天皇も昭和天皇も、そんなことは微塵も考えていなかった。これが第2の誤解につながります。

【誤解2】戦後、マッカーサーが天皇の権力を剥奪した!?

倉山:象徴天皇というのは、別に進駐軍から押し付けられたものではありません。日本はもともと象徴天皇でしたし、明治以降もそうでした。にもかかわらず、マッカーサーが勝手に思い違いをして、「独裁者はやめろ!」と言ってきたわけです。 ──話が噛み合っていなかったと? 倉山:そうです。初めからマヌケなやりとりなんですよ。しかも厄介なことに、ここへもうひとつの誤解が重なってくる……。

【誤解3】日本憲法下では、天皇は自分の意見を表明してはいけない!?

倉山:繰り返しますが、マッカーサーは天皇に「独裁者はやめろ!」と言ってきました。「判を押すだけのロボットになれ!」とは言っていません。日本国憲法の表現を使うなら、天皇は「国政に関する権能を有しない」としただけです。 ──「権能」とは? 倉山:一般的な言葉に置き換えるなら、「権限」でしょう。英語にすれば、どちらも「power of command」で同じ意味です。日本憲法下では、天皇は国政に関する権限こそ持ちませんが、自分の意見を表明することや、結果として影響力を行使することまでは禁じられていません。つまり戦後、日本人の多くは天皇に対して【誤解2】と【誤解3】という二重の誤解をしながら、マッカーサーすら口にしなかった暴挙を行ってきたということです。
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女系を認めない皇室典範は「男尊女卑」?
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日本一やさしい天皇の講座

天皇はいかにして権力を手放し立憲君主になったのか。そして今回、論点となった譲位、女系、女帝、旧皇族の皇籍復帰の是非について、すべて「先例」に基づいて答えることで、日本人として当然知っておくべき知見を集約した一冊。

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